CASBAH interview

 古くから本誌を読んでいただけている方なら御存知のことと思うが、私にとってCASBAHというバンドは特別な存在なんである。特別増刊号として発刊した前号に引き続き二号連続掲載となるCASBAHのインタビューであるが、前回のインタビューはあくまでも"March of the Final Decade"イヴェントをテーマとしたものであり、今回は2枚連続リリースとなった「Barefooted On Earth」#1&#2についてのインタビューである。
「で、今日は何のインタビューなの?」
前回からの間隔が2カ月そこそこと短かったせいもあるのだろうが、「まだ何を聞くんだ?」といった雰囲気もあって、どちらかというとリラックスした空気の中、世間話の延長のような形でインタビューは行なわれた。


※ このインタビューは、KABBALA#23(2000年 2月発行)に掲載したものです。




  日時:2000年1月8日(土)午後11時頃

  場所:千葉県船橋市・津田沼のサイゼリアにて

  話し手:羽鳥 恭充(vo), 村山 亮(gu), 小林 卓(ds), 古平 崇敏(bs)

  聞き手:杉浦 康司(KABBALA'zine)




 今回のアルバムの音に関してはどういった点を意識しましたか。

羽鳥:みんな取り敢えず各自ね、自分の音で多分精一杯だったと思うのね。まず自分の求める音を各自で録って、それから「全体の音をどうしたいか」っていうのを言ってたと思うんだ。

 では、自分の音で納得いったモノを4つ集めたって感じなんですか。

古平:でも、個人の音は100%納得はやっぱり出来ないもんだけど。

羽鳥:今回はエンジニアの人にある程度任せようっていうのがテーマだったの。だからそれはみんなで守った。だから今迄はそれこそ個々の希望があって「こーしたいあーしたい」っていう欲求で、結局ミックスの段階でまとまらなくなっちゃうから、あくまでもエンジニアの人に全部をまとめてもらうっていうのを大前提に今回は録ったから、そういう意味ではみんな犠牲にしてる部分もあるよね。自分の好みの音とは違うっていうか。

 エンジニアが考えるCASBAHのサウンドっていうのを…。

羽鳥:そうだね。もう、ずっと長い付き合いだから、菊地さんっていう人は。だから今のCASBAHのサウンドに向いているサウンドを今回作ってもらおう、任せようっていう事で、それを大前提にやったから。お互いに個々の自分の音で言いっこは無し。でまぁ、#1、#2って分けられたから、そこで#1を聴いての反省で、それはエンジニアの人も含めて「#2はもう少しこうしよう」っていうもうちょっと具体的な案が出てきて、だから好き嫌いは別として#1と#2は全然違うサウンドになってるから。

 違いますよね。

羽鳥:うん。#1の時はそのエンジニアの人にマスタリングまで全部同行してもらって、マスタリングの時もメンバーより先ずはエンジニアに意見を言ってもらって。全部そこまでやったから。

 私はどっちかっていうと#1の方が好きなんですよ。#2の方はドラムの抜けが悪いような気がして…。

羽鳥:そういう細かい事になると難しいね。

小林:抜けっていうのはどういうもんなの? 「ヌケ」って。羽鳥さんもよく言うじゃないですか、「抜け」って。「抜けてこない」とか…みんな(それぞれの解釈で)「ヌケ」が違うよね。

羽鳥:前にポーン! と出てくる感じかな、俺は。

古平:単純にバランス的に音がデカイとかいうもんじゃないですよね、抜けが良い悪いって。

羽鳥:まぁバランスで変わっちゃうからね。

 アタックの鋭さみたいなのもあると思うんですけど…。

小林:ちなみに俺は#1の方は凄い嫌いなんですよ。大っ嫌いなんで。聴いてられないっていうか(笑)。

 #2の方が納得してると。

小林:#2の方がもう全然。

羽鳥:どっちが好き?

古平:ん〜、曲によって分かれますよね。

羽鳥:ああ、向き不向きがあるしね。

古平:“Speak”は(好き)。

羽鳥:そうだね。“Speak”と“Flying High”の2曲は俺も凄い好きだよ。多分、語弊はあるかもしれないけど、しっかりしたオーディオセットで聴けば#1と#2でその差は歴然としてると思うよ。抜けどうこう以前の問題として、全体の音質っていうので。もう、#1は圧縮しちゃってるっていう音だから、ダイナミックレンジが凄い狭いから、ある程度音量を上げちゃったらもうグワ〜ッ! って割れちゃう音。#2は、結構(音量を)上げてもまだ行けるまだ行けるっていう音。

村山:#1は一回ダビングしたヤツとかで聴いたらちょっとダメなんじゃないかな。

羽鳥:ラジカセとかで聴く分には、もしかしたら#1の方が迫力が出るのかもしれない。だから(聴く人の好みに)よりけりだよね。何とも言えない。

村山:#2の方がプレイヤー向きかもしれない。良くも悪くも。

 #1の反省点を踏まえて#2でより質の高いものが出来た訳ですね。

羽鳥:うん、メンバーの中ではそうなってる。でもジェラシックのハセチャン(JURASSIC JADEの長谷川氏)も「#1の方が良い」って言ってたなぁ。それはまぁトータル的にだと思うけどね。#1の方が曲が今迄のCASBAHっぽくなかったっていう印象がさ。#2は4曲のうち2曲はライブでずっと演ってた曲だから、ずっと聴いた人にとってはそういう印象が。

 #1の方が新鮮だったんでしょうか。

羽鳥:凄い新鮮だったって言ってたよ。また違う世界に踏み入れた感じがしたって言ってた。

 周りの評判では#2の方が良いみたいですけど。

羽鳥:ハハハ、ゴチャゴチャだな。でも(どっちが良いって)そう言い合えるのが凄く嬉しいね。そういうのが一番良い事だと思う。

古平:どっちかに固まっちゃうのは…。

羽鳥:誰にもかれにも「#2の方が良い!」って言われちゃうと#1が可哀想だもん(笑)。そしたら俺は#1のファンになるよ。そうやって言い合えるのはお互いに両方それなりの良さがあるっていう事だからね、それは凄く嬉しいよ。

 特に“Speak”に対する支持が高いですね。

羽鳥:ふ〜ん、それはどの辺でなの、周りっていうのは? それはどの程度の周りなのか凄く聞きたくなるな(笑)。

 極狭い周りだったりして(笑)。いや、そんな事ないと思いますが…。

羽鳥:でもね、今回のツアーでずっと廻っててライブでのウケは凄く良かったよ。まず#1だけ出て廻ってたでしょ、それで途中から#2が出て両方持って行ったんだけど、そうするとMCで「これから演るのは11月に出た方(#2)だ」っていうと、みんなそれを買っていくんだよね。「どっちが新しい方ですか?」って。「あの最後に演った2曲の入ってるのはどっちですか?」とか。みんな“Speak”の入ってる方を欲しがって買っていってくれる。だから#1がちょっと可哀想なんだよ。

 ライブの反響でもそういう印象だったんですね。あの曲はビデオクリップになるという話がありましたけど。

羽鳥:(もうビデオクリップに)なってるんだよ。

 あ、そうなんですか。じゃあ流れる所では流れてると。

羽鳥:でも観たことないんだよね、それが。「ビデオ星人」(テレビ神奈川で放映されている音楽番組:編者註)とかでねぇ、流れてもいいんだけど…流れないね。ツアーの後半はそのビデオも持って歩いて…と言っても何カ所だ? 広島と大阪だけか。そういうビデオのセットがある所ではライブ前に流してもらったんだ。大阪は11月に行った時、ロケッツね。それで広島はバッドランズっていう所がステージの前にスクリーンがあって。

古平:音なしの(笑)。音なし映像のみ。

 それは今後Roadrunnerのオムニバスビデオに収録される予定とかは無いんですか。

羽鳥:どうだろうねぇ。入ってもらいたけどね。でもCASBAHは相手にされてないから、Roadrunnerに(笑)。そのインターナショナルにはね。その辺が難しいかもしれない。入れて欲しいよね。

小林:インターネットでもSPIDERとKEMURIはあるんだけどCASBAHだけ準備中なんですよね。

羽鳥:そうなんだよ…スイマセン。

小林:あれはウチがやるんですか? 向こうがやるんじゃないんですか?

羽鳥:みんなホームページ(HP)を個々に持ってるんだよ。一回作ったんだけどね、ある程度形に。で、発表する前に友達でそういうのを普段仕事でやってる女の子に見せたんだよ。「どう? こんなんで」って言ったら、「もっと良いモノ作りましょうよ」とか言われちゃってさ(爆笑)。「私協力しますから」「ああ、わかった…」って。

村山:ボツにされたのね。

羽鳥:一回ボツにして、それで発表出来なかったんだ。本当は年内中に立ち上げるはずだったんだけど、その子にボツにされちゃったんだ(笑)。その後、その子の仕事も忙しくなって見てもらえなくなっちゃって、今ちょっと中断してるんだけど。

 そのビデオクリップとかもHPに載せたりして。

羽鳥:そうだね、全部タイアップしてブワァー! ってやるはずだったんだ。その#2が出る前には立ち上げるはずだったんだけど…まぁでも、そのまま下手なモノを発表してあとで後悔するよりは(じっくり良いものを作りたい)。

 今回2枚に分けてリリースしましたが、誰が提案したんですか。

羽鳥:提案したのは我々。

 それは他誌のインタビューでも言われているように、主人公の明と暗というか、ネガティブサイドとポジティブサイドに分けたら良いんじゃないか、という理由ですか。

羽鳥:それと、もう一つは買いやすさ。ライブ会場とかでやっぱり2500円のアルバムを買うのは大変でしょ。お客さんも電車賃かけてチケット代かけてライブを観に来て。でも初めて見た人が「ああ、カッコイイなぁ」って思って「何か音源ないんですか?」っていう時に、「1st、2nd、3rdってありますよ。どれも2500円ですよ」っていうのだとちょっと買いづらいでしょ? ずっと応援してくれてるファンの人だったらそれでも買ってくれるんだろうけど、そういうCASBAH初心者の人のためにやっぱり買いやすい値段で(多くのファンに)買ってもらえたらなぁって思って。それで良ければ#1を買ってくれた人が#2も買ってくれるだろうし、#1#2が良ければ、前のアルバムに遡って買ってもらえるだろうし。実際、そういう風になってたしね。今回のツアーでそういう流れが出来てたから、知らないファンの人達にもとっつきやすいようにっていうのがある。

 そういう意図は成功したと思うんですが、個人的にはあの紙ジャケっていうのがちょっと扱いづらくて難点というか。

羽鳥:ああ、サイズがちょっと変だしね。普通のCDと違うでしょ。

古平:扱いづらい?

村山:どういう感じで扱いづらいの?

古平:汚れないように大事にしちゃうって事?

 紙だから傷つきやすいじゃないですか。ケースだったら割れても換えれば済むんですけど。

羽鳥:だからそれも狙いなんだよ。2枚買って、1枚は保管用にって。

村山:そうだったんだ。汚れちゃったらもう一枚買ってもらえるように。

 思い付きで言ってますね(笑)。

羽鳥:そんな事考えたことも無かったよ(笑)。今のは思い付きで言ったんだけど、でもそれはいいね、ハハハ。

 もし今でもLPというものが全盛であれば、A面とB面ですよね。

羽鳥:正にそうだね。そうしたかったんだけどね。アナログ盤を出せれば、一枚にしてジャケット違いとかで発表出来れば良かったよね。それは今でも出したいと思ってるんだけど。あの…某雑誌のレビューでも載ってたんだけど、「#1と#2をシャッフルして聴いてみたい」って、某BURRN! にも書いてあったんだけど、あれは良い事言ってくれたなって思う。本当にそうだなぁって。内容という点ではさ、4曲だと音源としては物足りないじゃない? 8曲位あった方が内容濃くなるでしょ? 聞き応えがあるっていうかさ。飽きずに何度でも繰り返して聞けるっていう点では(4曲というのも)いいんだけど。8曲になれば、8曲なりの曲順もあるのかなとは思うしさ。それはCDでの話だけど。

 あの中では“Bold Statement”が一番最初に出来たわけじゃないですか。次が“Garden Of Roses”で、#2のラスト2曲が先に出来てたわけですよね。そうすると終わりがあって、そこから遡って…。

羽鳥:あ、でも「物語」じゃないから。主人公が一緒だっていうだけで、8曲通してのストーリーとかは全然無いから。その“Garden Of Roses”とか“Bold Statement”を書いた時の詞の内容と、#1の方との詞の内容が明と暗って分れてるだけで、タイムラグっていうか、時間的には俺の中で浮かんだ順番っていうのは逆なんだけど。

 曲順通りに物語として時間軸があるわけでもなくて、ただ単に明と暗を分けただけであると。

羽鳥:無理矢理分けたような感じかな。だから#1から#2に移り変わる所の曲もあったりとかするし。

 その辺っていうのは曲作りにおいては意識されてないわけですか。

村山:うん。

羽鳥:全く無いね。

 前回のインタビューでは新しい曲を産み出す難しさみたいな事を言っていたと思うんですけど、今回の曲作りにおいて何か念頭に置いたようなことはありますか。ヴィジョンとか。

村山:う〜ん、ヴィジョン…。

古平:ヴィジョンなんてあります?

村山:そうねぇ、昔の曲(“Bold Statement”や“Garden Of Roses”)と最後に作った曲では大分スタンスも違うから。昔の曲もなんかの作品にするだろうとは思ってたけど、でも、最後に作った“Speak”とか“Flying High”とかは、そういうコンセプトの中で、その最後の(昔に作った)2曲とあともう2曲(が必要)っていう形で作ったんで、それでバランスが取れるように。一枚目が出来てから作った感じだからね。

 “Speak”と“Flying High”の2曲に関しては“Garden Of Roses”や“Bold Statement”とのバランスを考えたんですか。

村山:そうそう、うん。一枚の作品になるようにね。

 ちなみにどっちが最後に完成したんですか。

村山:“Flying High”かな。“Flying High”は一枚目のマスタリングの時に作ったから。だから一番後じゃないかな。…あれ? “Speak”だっけ?

古平:“Flying High”じゃないですか。

羽鳥:完成したのは“Flying High”の方が後でしょ。でも殆ど同時進行だったでしょ。

古平:殆ど同時進行みたいな感じで“Flying High”の方が一番最後かな。

 じゃあ最新のこの2曲のスタイルが現在のCASBAHの理想形なわけですね。

羽鳥:理想形っていうのとはまた違うと思うけどね。元のフレーズとかリフとか曲の構想とかを持ってきたのは亮チャン(村山氏)だし…違うわけじゃない? #1の方の“Mr. Mess”以外の3曲はター坊(古平氏)が元のフレーズを持ってきてるから。そこからすんなりそのまま亮チャンのイメージ通りに再現したのが“Speak”で、“Flying High”の方は割とみんなアレンジしたから。だからその辺が違う。元の元のサウンドを聞くと、その辺の変化している様がわかるから。その変化した「過程」が、今のCASBAHとは何だろうっていう、その曲の中で出来る範囲での理想というか、そういう所まで近づけたんじゃないかな。

 “Flying High”の途中にスライドで展開する部分があるじゃないですか。あれは強引というか(笑)面白いなぁと思ったんですけど…。

村山:でも強引にしようとは思ったよ、メッチャ変わるように。その前がとにかくヘヴィだから、一転してっていう、何処まで一転させるかっていう所で頑張ったっていうか、そういう作りにはなってますね。

 今回この曲に限らずそういった落差みたいなところが随所に見られますよね。

村山:そうだね。三拍子になったりとかね。

 あのぉ、話は全然変わるんですけど…Roadrunnerから離脱するんじゃないかという噂があるんですが…。

羽鳥:噂? それは何処から流れてきたの?(笑)

古平:どうなんですか?(笑)

羽鳥:離脱するという噂…いや、聞いたことない。聞いたことないっちゅうか…。

 バンド内部でそういう話をしたことは無いですか。

羽鳥:あ、でも話したことはちょっとあったね。

古平:まぁ…まぁそうですね。何と言うか。

羽鳥:「自分達の思うようにはやってもらえてない部分もあるね」っていう話はした。でも…Roadrunnerに所属してるから出来るっていう事も一杯あるし。そこの会社も人が少ないからね、その中で…日本のバンドだけじゃないからね、外国のRoadrunnerもアーティストを抱えてるから。自分達は他のレコード会社に所属したことがないから「こんなものなのかな」とも思うし、その辺は何とも言い難い。良くしてるくれてる事は良くしてるくれてると思うよ。でも、もしかしたらもっと自分等の音楽が好きでもっと一緒に仕事をしたいと思ってくれる人が何処かにいるかもしれないけどね。そうしたらその時は考えたいし、うん。だから別にそういう話は今の段階では無いよね。Roadrunnerの方が「もう結構です」って言うかもしれないけど。あんまり売れてないから(苦笑)。

 契約的に縛られてることは無いんですよね。

羽鳥:それは無い。

村山:アーティスティックな面に関しては尊重してもらってるよね。

羽鳥:今回だって#1#2に分けて、あんまりお金の話はしたくないけど、コスト的には一枚で出すよりもかかる事だから。それでもそうしてくれたし、バンドの意見を聞いてもらえたから、そういう点ではよくしてくれてると思う。

 レーベル側からの「ああしろ、こうしろ」っていう押し付けは全く無くて、創作活動に関してもバンドの自由にやらせてもらってると。

羽鳥:そうだね。ネットワークを海外にも持ってて、そういう所がRoadrunnerの強味かなと思って飛び込んだんだレーベルだったから、その辺の…そういう点ではまだ恩恵を受けてないけどね。自分等の発表した作品がまだ日本国内でしか出てないから、日本のレコード会社と契約してても変わらない状態だし。

 ライセンスだけ海外の別のレーベルと契約することは可能なんですか。

羽鳥:出来る。今ちょっとだけ水面下でそういう話をしてる最中だけど、まだ全然形にはなってないんで。でも何とか今年中には何らかの形で出せればいいなとは思ってる。

 常にそういう方向も視野に入れて模索して行きたいと。ところで、「March of the Final Decade」の最終章を東京・大阪と演って終えたわけですが、如何でしたか。

羽鳥:ただ楽しかったね。やっぱりあの終わった後のセッション、あの雰囲気っていうのが凄い気持ち良いっていうか楽しかった。あの為に苦しい40分間頑張ったっていうか(笑)。

村山:ハハハ、嫌なの?

羽鳥:「ヨーシ! 来た!」って、それ位のアレがあったね。あとに“お楽しみ”があったから違う意味で頑張れたかなっていうのがあったかな…今回の2回に限ってはね。

 じゃあ、最後の“お楽しみ”に一番力が入ったんですね。

羽鳥:いや、“お楽しみ”に向けて…っていう気持ちがあるから本番でより力が出せたかなって感じはある。

古平:“お楽しみ”ってどっちかっていうとリラックスしてますよね。

村山:そうだね。あの“お楽しみ”があって、「March of the Final Decade」の趣旨みたいな部分があるから。3バンドが協力して一緒に演るっていうのがね。だからあそこが他のライブでは無いような一番“濃い”部分なんじゃないの?

 MOTORHEADの“Ace Of Spade”という選曲は誰が持ってきたんですか。

羽鳥:曲を選んだのはCASBAHだよ。曲はいつもCASBAHが選んでる。

 なかなか意外な選曲かなと思ったんですが。

村山:ふ〜ん、そぉ?

 う〜ん、逆に意外じゃないのかなぁ…。

羽鳥:ど〜なんだろうねぇ。でも俺等の世代はみんなあの辺は少なからず通過してると思うから。

村山:プレイしてるから。

 やっぱりみんなが知ってるっていうのが大事ですよね。…確かに本当に楽しそうに演ってましたね。

羽鳥:あのギャップが面白いよね。それぞれの本チャンのライブと全然違うでしょ? 表情も。ステージにそのまま(続けて)立ってる俺等はツライというか(笑)一回一呼吸置いてさ、楽屋に戻って…CASBAHの場合は繋がっちゃってるからね。本音を言うと一回引っ込みたかったね。

 一回一呼吸置いて気持ちを切り替える時間が欲しかったと。

羽鳥:そうだねぇ。じゃないと、なんか「自分達のライブをやった!」っていう充実感を味わう前にプラスアルファが一緒にくっ付いちゃってるから。全く別々のものとして味わいたかった。…まぁ、無理だけどさ。時間的な都合もあるし。ただ、他のバンドが演奏するんで、俺等が紹介されて出てきたよね、一回くらい。

村山:うん、鹿鳴館の時(90年8月5日)かな。SACRIFICEがトリの時だったから。

羽鳥:違うバンドがトリを演って、紹介されて俺等が出てきた。

村山:“Metal On Metal”(ANVIL)だね。

 今年からは、冠は変わるけど、3バンドでのライブを今後も継続してやっていく意向なんですよね。

羽鳥:うん。そうね。

 この4人になってからもう2年以上になりますよね。サウンド的にも相当こなれてきたというか、一体感が増してきて上手く行ってる状態じゃないですか。ライブを観てるとそういう印象を強く受けるんです。

羽鳥:だから、ター坊が入る前にツアーした所で、まぁそれぞれにあるんだけど…出来の悪かったライブ、そういう所にもう一回このメンバーで行ってリベンジしたいねって言ってるんだ。あの悪いイメージのままでCASBAHの印象を残したくないからさ。もう一度演りに行って「こんなに成長したCASBAHを観てくれ!」っていうさ。

 自信を持って今のCASBAHをお届けできると。

羽鳥:ベストのコンディションで演らせてもらえればね(笑)。

 最近というかここ数年というか、羽鳥さんが丸くなったような気がするんですけど…。

羽鳥:はっ、丸くなった? あ〜 MCとか? そうだね、自分でも思うね。でも丸くなったのは随分前からだよ。

 90年代に入ってからはそうですかね。

羽鳥:でもライブでの運動量は日々増してると思うけど。昔の方がブワァ〜! ってMCで言ってたけど、結構ステージでは棒立ちだったもん。そういう意味では今の方が発散してると思うね。

 自分でも丸くなったと思うんですか。

羽鳥:いや、そういうのは無いよ。普段の自分とステージは全く別物だと思ってるからね。だからなるべく普段の自分はステージに出したくないという思いがあるから、ステージではCASBAHのメンバーの一員として違うでしょ? みんな違うと思うし。ター坊が普段からウガァ〜! って首振ってたらそれは違うと思うしさ(笑)。そりゃあ、見た目の変化とかステージアクションの変化とか、着てる服とか、そういうのは日々変わるから余計にそういう風に思われるのかな。何かあるじゃん、毎朝起きて「今日は何を着ようかな」っていうそういう気分で、赤着るのか青着るのかで全然変わったりするじゃん。そういうのに通じるのがあるのかもしれない。「今日はこういうカラーのライブを演ろうぜ!」っていう。だから同じツアーでも、それが可能ならば、たまにはファストな曲ばっかり演る日があって、翌日にはへヴィな曲ばかりを演るとかさ、それ位のギャップを付けて演りたいけど、でも演る側は何回も演ってるけど、観る側はその一回しか観ないから、会場が変わっちゃうとそういう事も出来ないよね。同じ所で3DAYSとか出来るんだったらそういう違う面も見せてあげられるけど…。やっぱり長いツアーで同じセットを繰り返すっていうのはキツイね。だんだん(演る側の)新鮮味が無くなってくるし、みんなそれはお互いどのバンドも持ってる事だと思うんだけど。

 またそろそろワンマンとかしたいと思いませんか。

羽鳥:したいね! メチャメチャしたいね。ホントさぁ、今度のイヴェント(1月20日・新宿LOFT)だって30分だしさぁ、足りないよね! 新しい曲もドンドン増えてるから、新しい曲も演りたけいど昔の曲も演りたいしさ、満遍なく聴いてもらいたいと思うと(時間が足りない)。

 短い限られた時間の中ではどうしても新曲中心のセットになって、昔の曲はほんの少しになってしまう。

羽鳥:時間が短い分だけそうなっちゃうね。短い時間の中では、当然出したばっかりの作品を演って聴いてもらって、そのリアクションを見たいし、CDも買ってもらいたいし。だから凄い困ってるよね、短過ぎて。昔の曲も一杯演りたいんだけど。

 今回のツアーでも古いナンバーは3曲位しか演ってないと思うんですけど、最近は90年前後の頃の曲って全然演らないじゃないですか。

羽鳥:“Swan Song”とか?

 あと“The Cloning”とか。

羽鳥:この間、沖縄行った時に言われたなぁ。「“Out of Wreck-Age”聴きたいです」って。沖縄の人がそんなの知ってるとは思わなかったな(笑)。ター坊入ってから一回も演ってないよね。

古平:演ってないです。

羽鳥:スグル(小林氏)が入ってから演ったっけ?

小林:一回か二回演りましたよ。

古平:えっ! ライブで? ライブでは演ってないでしょ?

小林:いや、リハで。

村山:ライブで演ってたの、秀チャン(前任ベーシストの服部氏)の時から演ってないかもしれないね。

古平:寺田倉庫(93年12月24日)で演ってましたよね。凄いアレは覚えてる。

小林:曲がどうのっちゅうのは、やっぱりレコーディングしたばっかりの曲じゃないとリハの量が全然違うから、演奏に差が出ちゃうんですよね。

 それが演る側にとっては納得出来ないですか。

小林:う〜ん、何っちゅうか、しっくりこない。練習量が明らかに違うから、ちょっと差があり過ぎますよね。やっぱり演るにはアンサンブルに差があり過ぎる。

 やるからにはしっかりとリハを積んで万全で行きたいと。

羽鳥:散々こなしてきた曲でもやっぱり全然リハーサルで演んなくなっちゃったら、差が歴然とするんだよね。レコーディングしたてのやつはそれだけ演奏が固まってるから、その中にポツンとリハ不足の曲が入るとギャップが凄いんだよね。もしかしたら観てる側の人にはそこまではわかんないのかもしれないけど、演ってる側がもう全然。それでいつもボツになっちゃったりするね。でも…この日(1月20日)は演るよ。昔の曲ねぇ! この日は「Young Metal Attack」(イヴェントのタイトル)だからね! やっぱりメタル演らないと(笑)。

 個人的には“Yet Not Has-Been”とか聴きたいんですけど(笑)。

村山:あれは(現在のメンバーでは)一回も演ったことないね。

小林:え? 何それ?

村山:ブルドック(Demo'89)の1曲目。

小林:ああ、あれの曲は一曲も演ってないね。

 “Believe Or Breed”だけ一回演りましたね。

村山:秀チャンの時に一回ね。

小林:ああ、演った演った。

村山:大分アレンジ変えたけどね。かなり変えて演りました。“The Right”も演ってない。

小林:そう言えば、何でブルドックの曲は演んなかったんでしょうね? 俺がオーディションで来た時に。

羽鳥:合わせなかった?

小林:合わせなかったですよ。

村山:練習では演るには演った曲もあるよね。“Word Known As History”は演ったよね。

羽鳥:演った演った。

 リハでは合わせたけど、やっぱりしっくりいかないからですか。

村山:そういう部分も関係してくるし。

小林:でも何かありますよ、全然合ってなくても、「あ、良くなりそうだな」って思うヤツって。

 リアレンジして…とかっていうのも無いんですか。

小林:多分そういう暇があったら新曲作るような人達なんじゃないかな(笑)。やっぱり俺等(小林氏と古平氏)は新鮮でも、彼らはもう何年も演ってますからねぇ。

 ライブではもう何年も演ってないですよ(笑)。もうこの曲はいいやっていうのはありますか。

羽鳥:みんなそれぞれ違うと思うけど。昔の曲でも結構やりたいっていう曲がみんなは一杯あるみたいだけど、俺はどんどん新しいの新しいのって思っちゃう方だから。でも今日久し振りに“Chain Gang”演ったんだけど、格好良かったね。凄い久し振りに演ったけど凄い気持ち良かったよ。そういう風になれる時に演れればいいかなって思うけどね。

 でも演るのはどうしても86、87年の頃の曲が多いですよね。

羽鳥:ああ、昔の曲で演るのが? そうだねぇ。

 こういう意見があるんですけど、今回の二連作では斬新かつ新しいことにチャレンジしていくという面で非常にCASBAHらしい作品である半面、既に91年のデモで示していたようなCASBAHの持つキャパシティーの大きさが活かしきれていないんじゃないか、と。もっと大胆な事が出来たんじゃないか、それが許されるんじゃないかという事なんですが、そういう意見がある事についてはどう思われますか。

羽鳥:ふ〜ん。…っていうか、その91年のあの頃にああいう曲を表現出来るだけの器の広さをバンドとして見せたのかもしれないけど、それはバックの演奏だけだと思うのね。俺自身は全然その時はついていってなかったから、他の3人のレベルに。いつも一歩遅れてやってたから、凄い限界を感じてたの、俺は。

 バックの変化に対応しきれなかった。

羽鳥:自分の変化したいという気持ちがもしかしたら4人の中では一番強かったかもしれないけど、気持ちとは裏腹に付いていけてなかったんだ。あの頃っていうのは、俺はCASBAHにいて一番辛い時期だったから。だから全然自分の中で思っているように表現出来ていないのね。だから、バックのみんなは器の広さを見せたけど、俺は全然その域まで到達してないから、そういう意味でやりたくないんだよね、あの当時の曲は。

 それがトラウマというか…。

羽鳥:うん。曲としては色んな事に挑戦してて、良い曲だなとは思うけど、あれは「自分のヴォーカルが無い方が良いな」と今でも思うから。そういう点でもう出来ない…俺がね。

 私も以前からしつこく「“Swan Song”演ってくれ !!!」って言い続けてましたよね(笑)。

村山:“Swan Song”は一応「DINOSAURS」に入ってるもんね。(ここ数年の)ライブでも演ったことある。

羽鳥:ライブでも結構演ってるよね。

古平:いや、一回位じゃないですか?

羽鳥:そうか(笑)。

 そう言えば、オープニングテーマ、SEを変えましたが、今後はあれを定番としていく予定なんですか。

村山:…どうなんでしょうねぇ。会場によっては、使わない時もあるから。

 あれは誰が持ってきたんですか。

村山:僕が曲を作って演奏も全部自分で演ってる。

 あ、オリジナルなんですか!

古平:そうだよ(笑)。あれは何かの曲じゃないよ。

羽鳥:今迄は人の曲だったからね。

村山:だからコーラスとかもみんなでやってるし。

羽鳥:あそこはみんなに「オイ!オイ!オイ!」と言ってもらえるのを狙いにして作ったのに(笑)それを全然やってもらえてないからね、それがちょっと寂しいんだよね。定着すればやってもらえるのかな…。

村山:ちょっと企画倒れ気味かなという(笑)。

 一発目からは上手くいかないですよ。意図が何処まで理解されるか、受け手によっても違うでしょうし。

羽鳥:そりゃそうだよね。でもメンバーが説明して「ここはみんなで『オイ!オイ!』言う所だぞ」とは言えないしさ、自然になって欲しいよね。ライブが始まる前から客が待ちきれなくてさ、「オイ!オイ!オイ!」って、外タレとかでよくあるじゃない? あれがやっぱり欲しいよね。そういうバンドっていないでしょ? そういうワクワク感っていうかさ、あれが流れたら「お〜始まった!」って客が「オイ!オイ!オイ!」って始まるからイッちゃってる位の状態、それが理想だよね。

 昔からのファンとしては複雑ですよ。ある程度のところまで行くとバンドの顔になるじゃないですか。例えは変かもしれないですけど、スタン・ハンセンが入場テーマ曲を変えたらファンは怒りますよ。あの曲を聞けば誰もがハンセンの顔を思い浮かべるじゃないですか。もうその域にまで行ってたと思うんですよ、個人的に(笑)。

古平:あ〜まぁそうだね。成る程ねぇ…。ハンセンっていうのがいいね(笑)。

羽鳥:だから、その前の「DINOSAURS」が昔の曲のリメイクで、バンドの中では一区切付けたつもりなのね。で、丁度メンバーも固まったし、今後は新生CASBAHで作品を発表していくわけだから、それと同時に「もういいんじゃない、SEを変えても」って。

 最後に2000年に向けての抱負を皆さんお願いします。こういう事をしたいという目標でもいいですし、公約でもいいですし。

羽鳥:公約はしない方がイイね、CASBAHは。大概公約通りに行かないから(笑)。

 今迄通りマイペースですか。

羽鳥:ペースっていうものは、そう簡単に変えられるもんじゃないからね。CASBAHはいつも時代に流されてるわけじゃないし、そういう意味ではマイペースなんだけど、たまにはCASBAHに時代が付いてきてくれる時があってもいいかなと思うから、今年はそういう年になったらイイね。

村山:周りを変えたいな。自分達が変わっていくのは今迄ずっとそうだったけど、周りを巻き込んで変えていきたい。

 台風の目になりたい。

村山:そうそう。

羽鳥:本当にそうだね。CASBAHが皆さんを引っ張る時があってもいいんじゃない?

 今はもう新曲とか作ってるんですか。

羽鳥:全然。これから。■■■







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