Gezolucifer:80年代初期のHEAVY METALムーブメントをルーツとした時、HEAVY METALには大別して「進化を肯定し可能性を求めたバンド」と「進化を否定して可能性を求めたバンド」が存在し、また、存在してきたと考える。90年代後期に入りその表現スタイルは実に様々であることは皆が知り得るところだ。
俺(Gezol / Gezolucifer)は、今SABBATというBLACK METALバンドでベース/ヴォーカルを担当しているが、SABBATは常にMANIACで“何か”新しい事をHEAVY METAL / BLACK METALの枠の中で試してみようという方向性にて作曲をしている。それを皆に理解してもらうために俺はBLACKING METALと呼んでいる。SABBATはしたたかに「進化を肯定し可能性を求めたバンド」だ。そしてそれはあくまでHEAVY METALの最もマイナス文化の、暗黒側の究極の音楽表現方法であり、かつHEAVY METALのカテゴリーされた中にとどまらなければならないと考えている。その拘りはBLACK METALという文字の中にMETALという文字が入る以上、ルーツは80年代初頭のHEAVY METALであると悟している。
SABBAT結成の84年頃、日本で初めての本格的SATANIC METAL / BLACK METALバンドの方向性を固めるべく俺の当時考えていた沢山のHEAVY METAL然たる曲を全てSABBATから排除していった。その頃は沢山の日本のHEAVY METAL / ジャパメタバンドが存在していたから、よりバンドを良い方向へ進めるためには「人とは違ったことを演るべきだ」と悟したからであり、と同時に「若かった」事もあり、よりアグレッシブでスピーディーなものを求めた結果、THARSH METAL / HARD COREの要素も取り入れることとなり、現在に至り、よりAtomosphereなパートやGrinding、Doomyなネオクラシカル、ゴシック的メロディック要素も取り入れている。
METALUCIFERはその「進化を肯定したバンド」とは全く対極の、俺が当時(SABBAT結成84年頃)やりたかったもう一つのHEAVY METAL。SABBATから排除した楽曲群の「進化を否定して可能性を求めたバンド」であり、ルーツたる80年代初頭のHEAVY METAL群から90年代の今もなお生き残る「進化を否定してきたバンドの純然たるHEAVY METAL」直系の音術である。
Gezolucifer:METALUCIFERは単なるおやじの遊びごとである。METALUCIFERに参加したメンバーは、もちろん俺/GEZOLUCIFER(ベース&ヴォーカル)と、残る2人のメンバーは70年代から80年代初頭へのメタルの流れから、80年代初頭のTHRASH / SPEED METALが出現する流れを良く知るプレイヤーである。これは70年代HARD ROCKは明らかに80年代初頭のHEAVY METALとは違ったものでありありながら、70年代のHARD ROCKが何らかの影響をHEAVY METALに与えているんだ! という事を知っているという事と、HEAVY METAL / POWER METALがTHRASH / SPEED METALとは明らかに「リフ」のキザミ(カッティング)やリズムの上で違ったものであるという事を知っているということがMETALUCIFERの核なる正統派HEAVY METALをプレイする時に重要なポイントになるからである。
ELIZAVEAT(ドラムス&ギターソロ)は元々SABBATのメンバーで、今でも時々会っている。彼は色々な音楽を沢山知っているし、勿論HEAVY METALの全ての流れをリアルタイムで俺と過ごしてきた。メロディックデスやブラック、死体/内臓系Grindeathをも愛聴している彼は元々ギタリストであるが、ドラムをある程度プレイ出来ることを知っていたし、実際数回ステージでプレイしたこともあり、「タイコでやってみる?」と言ったら喜んで引き受けてくれた。お世辞にも「リズムがしっかりしている」とは言えないが、80年代の「臭み」を出すために俺は敢えて「ドラマーでないドラマー」を選んだ。
ELIZABIGOREはELIZAVEATの実の兄である。彼は言うまでもなく弟と互いに影響しあっていた。SABBATのライブを観に来たり、また彼自身バンドを長い間続けていたので、俺が「METALUCIFERをやりたいんだが、手助けしてくれないか?」と言ったら快くOKを出してくれた。何よりもELIZABIGOREはコピー(カバー曲)をやらせたら完璧にギターワークをマスターしてしまう人物で、レコーディング時にも全てのギターバッキング等をほぼ1日で終わらせてしまったからタマゲタ! METALUCIFERが彼にとって初めての本格的なレコーディングであったにもかかわらずだ。ちなみにこの兄弟は地元(三重)でGOREなるHARD ROCKバンドをやっている。ELIZABIGOREはコピーワークであったにせよ、オリジナルワークであるにせよ、「感情投入」を忘れることはなくプレイ出来る事が素晴らしい。
あとゲストを紹介しておくと、Mr. MATSUI(本名:松井博樹)、彼は初期のHEAVY METALからBLACK METALまで本物をこよなく愛するキーボーディストで、BIG WAVEなるDEEP PURPLE直系の様式美系バンドの専任ミュージシャンであり、名古屋を中心にライブ活動を行なっている。インストゥルメンタルでキーボードのバッキングとソロをプレイしてくれた。Mr. OKAZI(本名:岡嶋永英)、名古屋を中心に性力的?に活動している、日本の誇るDeathrashバンドVOIDDのリーダーで、ギターとヴォーカルを担当している。いつもは100万馬力の叫びを聞かせているが、コーラスパートで参加してくれた。TEMIS OSMOND、現SABBATのギタリストで「OZZYとRANDY RHOADSならケツを貸してもいい」という人物。怪しく邪笑なソロフレーズを信条としているが、今回は“Heavy Metal Drill Part 1”と“Soul Warriors”で、くされソロに挑戦、コーラスに参加してくれた。NEAL TANAKA(本名:田中利和)、恐らく世界でもトップクラスに入るであろうHEAVY METALコレクター。欲しいレコードには金を惜しまず、今日もレコード店を歩き回る。「あるうちに買っとかんと、後で後悔するでよぅ。レコードは出会いなんだわ」という名古屋弁で名ゼリフを生み出した彼は、コーラスパートと“Heavy Metal Is My Way”のシャウトをやってくれた。勿論スリーブ写真に使用されたレコードは彼のコレクションからのもので、中身やレア等に関係なく、くされカバーのコンセプトで選出してくれた。そしてスリーブのDRILL KILLERこそ、彼本人である。
METALUCIFERという名前はどこから思いついたのですか?
Gezolucifer:METALUCIFERというのは造語で、METALとLUCIFERをかけた、メタル魔王である。実はこの造語は92年リリースのSABBATの「EVOKE」というアルバムのラスト曲“Metalucifer and Evilucifer”のタイトルから得ている。メタル魔王と邪悪魔王が結合してSABBATがあり、メタルのルーツと正統派HEAVY METALの定めがMETALUCIFER、メタルの暗黒の邪心化がEVILUCIFERとしている。
Gezolucifer:SABBATでやったらただのジョークになるから(笑)。いや、ファンが混乱してしまうやろ? 確かに昔はSABBATでやっていた曲が何曲かあるんやけど、今と昔では状況が違うし、今のSABBATでやるにはもっとヘヴィな方が良い。だから昔の曲の“まだらの卵”なんていうのはSABBATでやったけど、とても“Heavy Metal Is My Way”なんてSABBATじゃやれへん!
Gezolucifer:最初は1枚で止めておこうと思っていたんだけど、悪い欲が出てきたんで、2ndアルバムも5年後くらいにリリースする予定でいる。曲も既に4曲ぐらい書き上げてある。でも今はSABBATの方が凄く忙しいんで、METALUCIFERはおあずけ状態。ELIZABIGOREはすごく次の奴をやりたがっているけど、「まぁ慌てるなっ!」。俺は“良い物”だけを作りたいから…。でも次のタイトルは「HEAVY METAL CHAINSAW」だ!
Gezolucifer presents
"HEAVY METAL HUNTER" & "MEAVY METAL DRILL"
METALUCIFER全曲解説
HEAVY METAL IS MY WAY
この曲の原曲というか後半の3重の所以外は、殆ど84〜85年に書かれていたものを手直しして95年に完成させた。「HEAVY METALは、我が命」 正にその通り「我が生きる道」である事を歌っている。
この曲をアルバムの1曲目に持ってきたのは、いわゆる前奏/前菜の様なもので当時よくあったインストゥルメンタル=1曲目にあたればいいと思った。もちろんインストゥルメンタルチックな曲ではないけれど、METALUCIFERの詩の多くのメタルファンの真髄を集約していると思う。まぁ、こんな直接的な思わず恥ずかしい様なタイトルは俺にしか出来ないだろう? メタルが本当に好きな連中は何とも思わないけどな。少々キャッチーなミドルテンポの曲。バッキングヴォーカルにNEAL TANAKA、VOIDDオカジなるメタリストを参加させた。
HEAVY METAL DRILL
この曲は84〜85年に既に完成していたけれども、全体的にスラッシュ的だったので一番最初に出てくるハモリパート以外の全てのバッキングを95年に作り直した。歌詞も96年に作った。仮タイトルは“HEAVY METAL NOISE”だった。コンセプトは「俺の信念のMETAL DRILLを貴様ら偽メタル連中の頭にぶっ刺したるでぇ〜!」。
当時最初は、すげぇかっこいいメタルだったんだけど、2枚3枚とアルバムを出すうちにポップな方向やおちゃらけた方向は音楽性を変化させていくバンドや、えらく派手にちゃらちゃら着飾った女みたいなコスチュームを着たバンドが存在していた。今でもそういうのはいるけれど、まぁ現在のビジュアル系っていう連中の服みたいなそういう奴等が大嫌いだった。そいつらに向けた俺達メタル族からのメッセージだ! ちゃらちゃらするんじゃねぇ、この野郎! だぜ!! METALUCIFERがアホ狩りをする時の歌だ。
イントロの効果音がくさくていいと思う。そして2曲目はやはりスピーディな曲だね。これがルールだな! IRON MAIDENを彷彿させるであろうハモリパートにヨーロピアンメタルチックなヴォーカル/バッキングギターを上手くドッキングさせたと思う。今まで何故このドリルというのが欧米のメタルバンドの歌詞に使用されなかったか不思議であった。まぁ日本では算数ドリルや国語ドリルなんてのを思い出して、カッコイイ言葉だと考える奴は少なかったのかもしれないが、誰も使わないなら「俺が使ったれ」と思ってアルバムタイトルにもしてやった。当時から考えていたことが実現できて非常に嬉しいわ。
HEAVY METAL HUNTER
これは全て95年に作詩作曲した。のっけから、タイトルに“HEAVY METAL”と付く曲を3曲並べたアルバムは前代未聞だろ?! これはERIZAVEAT氏のアイディアでもある。これだけでこのバンドのイメージングは成功していると思うし、その姿勢や熱意を感じさせる事ができるだろうと俺も考え、選曲したんだ。
作曲はジャーマンメタル風に仕上げたつもりだ。サビのブレイクの所の低い方でHEAVY METALなんていうハモリを入れるのはいかにも「くっさい」ジャーマンメタルだと思うんだが…。詞はメタルマニアの奴がレコード狩りをしているサマを歌ったもので、奴はレコードのバンドの曲のタイトルを見てそれを買おうかどうか決めるんだが、HEAVY METALとかMETALのタイトルの付いている曲があれば何があろうと即買いに走るというもので、METALの付いているメタルバンドなら何でも手に入れるという詞なんだ。そこで俺はあらゆるメタルのLPをチェックし、METALのタイトルを拾い出してそれをプレイしていると掛け合わせて歌詞を仕上げた。結構苦労したけど、なにしろたくさんタイトルがあったから、「よしそれならPART1、2を作って歌詞とギターソロをそっくり入れ替えた2バージョンを作れ!」と! まだまだあるんで、もしMETALUCIFERの2ndアルバムを作る気になったらPART3も作る予定だ。HEAVY METAL HUNTER PART1はミニアルバム「HEAVY METAL HUNTER」に、PART2はアルバム「HEAVY METAL DRILL」に入れた。
ギターソロも敢えて違いがわかるように、PART2は最初にメロディを弾いて残り後ろの方のパートはライトハンド奏法、PART1は最初にライトハンド奏法を使用して残りはメロディを弾くというようにした。
実はこの詞のアイディアはアメリカのMEGAFORCE RECORDSからリリースされていたLONG RANGERなるバンド?の“METAL RAPSODY”という曲からヒントを得ている。この曲“METAL RAPSODY”は、ラップの上にメタルのバンド名が上手く(?)コンビネーションされて歌っているものであったが、ラップの上というのがなんとも俺は腹立たしいと思っていたんだ。もっとメタルな曲の上に歌いコンビネーションしたらどうだ、とずっと考えていたんだ。HEAVY METAL HUNTERが浮かんで曲もそれにまさにぴったんこだったんだ。そして特に気に入った曲だったからアルバムタイトルにしてミニアルバムの1曲目にPART1を置いた。
WOLF MAN
この曲は初期SABBATの時にレパートリーがなかったんで時々ライブでプレイしていた曲だ。86年位まではプレイしていた気がする。SABBATでプレイしていくにはオカルト的だけどメタルチックな曲なんでレコーディングはしなかったんだ。でもMETALUCIFERではオカルト風味も少し加えたかったんで、今回やる事にした。Japanese Versionは95年頃に仕上げた。歌詞はJapanese Versionそのものの内容。狼男。
METALUCIFER
曲は84〜85年に2曲完成させたものより無駄な部分を削って、95年に1曲にまとめてアレンジし直し、このインスト曲を完成させた。インストゥルメンタルというのは詞が無い分、リフメロディで説得力をリスナーに与えなければならない。HEAVY METALであることの原始的な攻撃力と緻密さを上手く融合させ、リフ自体が“歌うメロディ”を誘引させる事が重要と思う。この曲はあらゆる面で非常に完成された仕上がりになったと思うが、IRON MAIDENからの影響は多大である。しかし、真に80年代を思わせるギターとキーボードソロは圧巻である。決して“速さ”にとらわれない“泣き”のたまったメロディラインは、俺達の求めている「不滅の心」。このパートがより一層、曲の深みを与えてくれる。
そしてもう一つ、「METALUCIFER」はHEAVY METAL掟を守る、IRONとSTEELとMETALで身を固めたIRONとSTEELとMETALでできた戦士であり、テーマ曲がこのインストである。METALUCIFERと、次のIRON' N' STEELN' METALは組曲なんだ。
IRON' N' STEELN' METAL
頭のリフとヴォーカルラインのバッキングとラストの行進曲風のパートは84〜85年に作っていたが、残りの全ては95年に完成させた。MANOWAR+CLOVEN HOOFの影響下の曲。中間部のアルペジオ/ベースソロパートから、ツインギターソロパート部分がお気に入りで、ギターソロ直前のヴォーカルシャウトからギターソロへのなだれ込みは、「何故ギターソロが必要であるのか」という疑問に有無を言わさず答えてくれるであろう。かつ、これまた超圧巻のギターソロワークは絶品の仕上がりである。今時の連中にぶつけるHEAVY METALの魂ここにあり! である。
詞は、「IRONとSTEELとMETALが閉ざされた暗黒の扉を破り、今再び集い、戦士の命を受け、果てしない終わりなき闘いに挑む」といった内容で、正統派HEAVY METAL復権の願いを込めた入魂作である。
いつの世も流行り廃りはあるものの、今なお生き残る純然たるHEAVY METAL BAND達に敬意を表したい。決して売れてるとか、名声のあるバンドだけではなく、この火を絶やさんとするたくさんのマイナー群のバンド達も思いは同じであろう。今からでも遅くはない。俺達の望むHEAVY METALの姿はまだ死んでいない。
MONSTER OF EARTH
オリジナル原曲は84〜85年に完成していたが、いざスタジオでリハーサルしてみたら思ったより曲が平坦でインパクトに欠ける作りだなと思い、95年にサビ前のブレイクのパートまで全く違ったスタイルにアレンジし直した。非常にエモーショナルな、初期PRAYING MANTIS風?のフィーリングに描き直したので気に入っている。サビの“Monster of Earth”はキャッチーでしかもリピートしてくるんで、一番印象に残るメロディーかもしれない。
詞は95年に仕上げたが、コンセプトは原曲を作ったときに既に完成していて、半分位は書き上げてあった。ずばり「ゴジラ」の歌だ。しかし、そのコンセプトは“初期ゴジラ”に基づくもので“破壊ゴジラ”であり、「人間の欲望の代償としての人間の勝手な道理で造られた創造物などぶち壊してしまえ」である。みなさん自然を大切にしましょう。