SOLITUDE interview

 SACRIFICE解散から約6年、解散後、殆ど動向が伝わってこなかった杉内 哲(Vo)が再びシーンに帰ってきたのは、99年3月20日の目黒LIVE STATION、元SACRIFICEの盟友だった西田 亨(Ba)、東京を中心に活動をしていたHMバンドRIP RIDEの中森 浩樹(G)と小谷野 靖男(Ds)というラインナップで結成されたSOLITUDEの初ライヴでの事だった。
 各メンバー共、メンバー探し等で苦労し、長いブランクを経た兵達の集まりがSOLITUDEだが、そのブランクをものともしない堂々としたステージング、力強さを感じさせるHEAVY METALの王道たる姿を感じさせる楽曲、このメンバーだからこそ出せる音楽と風格は素晴らしいものだった。その後、Gが元BARTOLOMMEOの井田 真悟にチェンジ、数こそはそんなに多くないものの、99年末に久し振りに行われた「March Of The Final Decade」へ参戦、更には「Heavy Link」といった企画ライヴを行う等、着実な活動を続け、新たなる支持を得ていったのはご存知の事だと思う。そして、満を期して待望のアルバム製作に突入する。昨年からじっくりと時間を重ね、今年に入ってレコーディングを終え、つい先日、ようやくマスタリングも終えたアルバム「VIRTUAL IMAGE」はほぼ完成の状態でリリースを待つのみとなった。そんな中で小谷野が脱退というショッキングなニュースが飛び込んできたが、SOLITUDEは既に後任探しに入っており、既に候補者も幾人か考えているようで、一安心といったところだ。そんな状態ではあるが、メンバーに結成から語ってもらうことにした。なお、本誌#22をお持ちの読者からすれば繰り返しと感じるかもしれないが、#22は限定100部だった為、殆ど目に触れていないと思われるので、あえて質問した内容もある点をご了承願いたい。


※ このインタビューは、KABBALA#28(2001年 5月発行)に掲載したものです。[原文ママ]




  日 時:2001年3月25日(日) 午後9時30分頃

  場 所:東京・新宿の居酒屋CARAVAN HOTELにて

  話し手:杉内 哲(Vo)、井田 真悟(G)、西田 亨(Ba)

  聞き手:多田 S.S.M. 進 (KABBALA'zine)




 まずは軽くで構いませんので、結成から聞かせていただけますか。

杉内:結成は96年ですね。一応、バイオ上ではそのように書いてます。なぜ一応なのかというと初ライヴ(1999年3月20日/目黒Live Station)を行った時のメンバーになったのが96年だからです。実際には西(西田氏)と俺は結成の2年前の94年頃から一緒にやってました。経緯は、元々俺がSACRIFICEを抜けた段階で西がACE IN THE HOLEっていうバンド(杉内脱退後のSACRIFICEのメンバー3人に新たにVoを加えて結成されたバンドでオルタナ色の強いへヴィ・ロックだった:筆者註)をやっていたんだけど、その活動状況っていうのがあまり俺のほうにも入ってこなくてね。何してるのかなぁっていうのがあったし、SACRIFICEを辞めてまた新しいバンドをつくりたくなってた時だったから、西にまた一緒にやらないかと声を掛けてスタートしたのが始まりだね。最初は別なギタリストがいて、ドラムは誰がやってたっけな…?

西田:真二(元SABBAT〜SACRIFICEの舘 真二氏の事)。

杉内:ああそうか。で、スタジオに入って曲を作ったりして、どんどんやっていたんだけど、とにかくその時はリハーサルしかやる事がなかったから、その間にメンバー間での考え方や方向性がずれてきちゃってね。メンバーを変える度に今まで作ってきた曲を壊しては作って、また壊してといったような作業の繰り返しをしていた。それから元RIP RIDEの小谷野(Ds)と中森(G)に出会って固まったのが96年だね。

 メンバー選びは多少難航したようですが、SACRIFICE時代のメンバーだった村上さん(G)を加入させる考えとかはなかったのでしょうか。

杉内:全く考えてなかったですね。

そうなんですか。村上さんのギターは結構好きだったんですけどね。

杉内:SACRIFICEの時に一般的に言われていたのは、俺のヴォーカルのアグレッシヴな面と彼の持つメロディラインでバンドが成り立ってたようなことを言われてた時があったんだけど、SACRIFICEを辞める段階で俺と彼との間では音楽的な方向性がちょっとズレてきてたんだ。だから新しいバンドに誘うって事は全く考えてもみなかったよね。

 こんな事を言うと失礼かもしれませんが、杉内さんがSACRIFICEを抜けて残ったメンバー3人に新しくVoを加入させてACE IN THE HOLEになったわけですが、正直、その中で西田さんは何か浮き気味だったように思うんですよ。メタル色を一番感じさせていただけに、メタルとは別な音楽性をやるのに(メタル色は)拭いきれなかったように感じがしました。

西田:そっか。SACRIFICEでは自分のメタルでやりたかった事は出来たかなとあの当時は思ってたから、取りあえず自分の中で好きなものとかやってみたいものっていうのは多々あるわけで、今度はちょっと(メタルとは)違った事をやってみようって、実験的な冒険的な事をやろうとしていたのがACE IN THE HOLEだった。

 西田さんのステージング等はモロにスティーヴ・ハリスみたいで、俺はSACRIFICEを観た時にすっげーかっこいいと思ったんですよ。だから今SOLITUDEでああいう音楽をやってる姿を見れるのは凄く嬉しいです。

西田:スティーヴ・ハリス辺りは凄く好きだけど、周りからいっぱい言われるから、別に真似しようと思ってやっているつもりはないんだ。けど、始めた頃は凄く好きで真似とかしていたから自然とそれが出ちゃうんだとは思うんだけどね。

杉内:自然な事だよな。

 初ライヴの後、中森さんが脱退してしまいましたよね。最初のライヴをやったラインナップが崩れてしまったわけですが、それはどう感じたのでしょうか。

杉内:浩樹(中森氏)が入って96年から99年まで約3年間リハーサルを重ねて、やっとライヴをやったわけで、好きな事をやる為に俺達はバンドを続けてるんだけど、好きな事をやり続けるためにも、好きな事を好きであり続けるためにもある程度のクオリティと自分達の楽しみ方を持ってなくちゃならないと思うんだよね。最終的なところがレコーディングでありライヴであったりするわけですから、ライヴの中で色々と反省すべき点があった段階で、また更にドンドン良くしていこうという事をメンバーは考えてくれてると思うんですよ。そこで最終的に色々な事を考えた上で、ベストな意味で俺達としてはメンバーチェンジをしたくないと最初から言ってはいたけれど、でも、俺達の意識と同じようにやっていけないとなるとメンバーとしては永く続けられない、という結果になったのが現状だね。

 言い方は悪くなりますが、バンドって別の人間が集まってやっていかなくてはいけないものだから、皆が同じ方向や目標に向かっていかないと続けにくいものですよね。

杉内:人間的な関係が崩れたとかっていうのは全く無くて、自分達がどれだけバンドに時間が割けられるかとか、どれだけ物事を考えられるかだと思うんですよね。最終的には。その中で、まぁ、多田さんなんかは初ライヴの後で(中森が)抜けたと思ってるのかもしれないけど、俺達としては一緒に活動を続けた3年間の中で彼が考えた結果が脱退という事だったと思うんですよ。で、それを俺達が認めたという事だけであって…。

 次のライヴがその年の12月に行われた「March Of The Final Decade」で、ギターが今の井田さんにチェンジしていたのには驚きましたね。

杉内:俺達は知名度があるバンドではないし、一回のライヴしかやってなかったから、そんなに公にする事では無いと思ったし、とりあえず井田が入ってきても何の差支えは無いかなと…。で、彼はいいものを(SOLITUDEに)持ち込んでくれたと思うしね。

 何故、井田さんに白羽の矢を立てたのでしょうか。

杉内:昔から知ってる仲だったっていうのが第一だね。いいところも悪いところもよく知ってるよ。井田も俺達に対してそう思ってると思うんだよね。SACRIFICEの「TOTAL STEEL」なんかでもバックコーラスで参加したりとかローディをやってもらったりとか、色々と付き合いはあったから。でも、実際にこんな事を言うのもなんだけどSACRIFICEを辞めてから結構年月が経ってたんで、井田がどんなギターを弾くのかは漠然としか覚えてなかったんですよ。でも、彼が加入してみて思った以上にフィットしたので、そういった点では良かったと思っている。バンドの顔色というか色も変わったような感じがするしね。

 これも失礼かもしれませんが、SACRIFICEが解散してからSOLITUDEとして再度シーンに姿を表すのにかなりブランクがあったので、正直、俺は引退したと思ってました。

杉内:いや全然そう思っていたのは問題無いですよ。

 (SOLITUDEとしての)初ライヴを見た時、目頭熱くなりましたもん。

杉内:嬉しいねぇ。俺も西も、これは前のインタヴューでも言ってる事なんだけど、田舎からバンドをやる為に出てきて、バンドを永くやっていく方法の中で考えちゃう時期もあって、丁度、俺なんかはそれだったと思うんですよ。引退したと思われてもおかしくないぐらいの生活も送っていたし、周りの接触も絶って、もうバンドはやらないだろうなと思ってた時期は正直ありました。ただ、やっぱり再びバンドをやりたくなってきちゃったわけだし、自分の居場所っていうかなぁ、落ち着くところっていうのはここなんだなぁって分かった事を再認識した上では、あの時のブランクは凄く自分にとってプラスになってますよね。

 初ライヴは対バン(JURASSIC JADEとTERROR SQUADだった:筆者註)にも恵まれてましたよね。

杉内:そうだね。あの時に、俺達の演奏時間が長く欲しかったから、3バンドでやろうって言った時には、「えーっ」って言われたんだ。他の2バンドにはね。でも、よくNobさん(JURASSIC JADEの長谷川氏)なんかOKしてくれたと思うし、TERRORのメンバーなんかも動員面等で不安がってたからね。

 あの日はTERROR SQUADにしてもJURASSIC JADEにしても、SOLITUDEの為のステージだったように思いました。

杉内:そうだね。良く盛り上げてもらったと思うよ。まして、最後をやらせてもらったんだからね。「初めてやるバンドに最後やらせてもいいの?」って言ったんだけど…。

西田:そうだね。凄く良くしてもらったよね。

 これは個人的な話なのですが、初ライヴの翌日に名古屋へGezolさん(SABBAT)のインタヴューをやりにいったんですよ。GezolさんがSOLITUDEの音を聴きたがっていたので、ライヴを録音したテープを聴かせたんですよ。

杉内:渡したでしょ、ライヴ・テープ。知ってたもん、あいつ。「いや、あるとこから仕入れて」って言ってたけど(笑)、多田さんかどうかは分からなかったな。けど、絶対KABBALAルートだなって(笑)。特にあいつは1曲目の“Virtual Image”が気に入ってたね。彼にはMETALUCIFERのスプリットEPで「Iron Pegasusのレーベルオーナーが一緒に参加してくれないかという事を言ってるよ」と言われた事があったんだけど今回はいろいろな事を考えた上で断ったんだ。でもIron Pegasusはディスクユニオンとかにも入ってくるのが早いよね。これからも俺達は色々とディールを当っていくつもりだから非常にタメになるよ。国内と国外をある程度考えていかないと無理だろうから、それにどっちか片方だけでも無理かなとも思うから、がんばりますよ。

 井田さんが加入してから幾つかライヴを重ねて、ようやくレコーディングもしたわけですが、今度は小谷野さんが脱退してしまいましたよね。後任についてはまだまだ先ですか。

杉内:俺達は8月には「Heavy Link」を今年もまたやるつもりなんで、それまでにはちゃんとしたメンバーを見つけて、活動をするつもりではいるんですけどね。まぁ、限られた人選の中で考えてはいるんですけど。

 折角、アルバムもあとはプレスだけという段階にまで来ているわけですから、ここで停滞してしまうのは大きな痛手になりますからね。

杉内:勿論。そのつもりは無いですよ。

 出すものを出したら、ガツンといってもらいたいですよね。王道メタルの救世主っていうわけじゃないけど、気合の入りを感じますね。

杉内:王道メタルって言われると照れるんですけどね、正直言って(笑)。SOLITUDEを始めた時から特に王道メタルをやろうと思って始めたバンドでも何でもないから。プログレッシヴ・ロック的な響きがあるのでバンド名もSOLITUDEにしたって感じで、どっちかって言うとルーツにあるものを大切にしようと思って始めたバンドなんでね。西も俺も井田も70年代HRは聴くし、80年代のNWOBHMも勿論好きだし、まぁ、バンドっていうのはある程度永くやっていけば行く程、型が決まってきてしまうものかもしれないけれど、その中でもやりたい事はやりたいっていうのを持っいて、ただそれをSOLITUDEの音楽の中に色々と詰め込んでいるだけなんですよ。

 それは結成当時のバイオにも書いてありましたよね。サイケであり、プログレッシヴな面も音楽に取り入れていきたいと…。

杉内:自分達でもそのつもりですし、色々な要素が詰まった曲も今回音源にしていない曲のなかにもたくさんあるのだけれど、アプローチの仕方がどうしてもヘヴィメタルになってしまうんだよね。

 ある種のフォームは既に固まっているとは思うんですよね。

杉内:ただ、俺達が最初から思っているのはSOLITUDEがいい意味でも悪い意味でもHMの王道、それもいっこうに構わないし、何て言われようが全然構わないんだけど、ただSOLITUDEって名前が挙がった時に、最終的に俺達の欲で言えばSOLITUDEにしか出来ないサウンドが確立出来てればいいと思うんだけどね。

 SOLITUDEっていうバンド名からして、意外な気もしますよね。

杉内:そう? 最初の頃はBLACK SABBATHを意識してつけたのかと言われたよね。ヘヴィメタルファンの人からは。でも、俺なんかはフランスのプログレとか聴いたりとかしていてSOLITUDEって言葉の響きがいいなってだけで付けちゃったような感じだから。

 SOLITUDEっていうと、何となくSABBATHを思い浮かべるのは分かりますね。SOLITUDE AETURNUSがいい例ですが、メタルメタルした音楽を演奏するバンドがSOLITUDEって響きのバンド名は意外な気もしますね。

杉内:ただ、やっぱり今回もSで始まるバンド名だった事は間違いないね(笑)。Sはロゴにしづらいから止めようって話もあったんだけど、Sで始まる単語自体に深い意味を持つ単語が多くて。

 SAXONとかSCORPIONS、SAVATAGE、SABBAT等、ざっと思い浮かべただけでも出てきますね。

杉内:Sで始まるバンドはかなりあると思うよ。

 そろそろアルバムの話に移りたいのですが、ジャケが既に完成しているらしいですね。

杉内:見ますか?(といってカバンの中からジャケの見本を取り出す…)

 見せていただけますか(といって拝見…)。何かジャケを担当したイラストレーターの方は光りもの系で有名な人だという話を聞きましたが、日頃はどういうところで活躍している方なのでしょうか。

杉内:車関係が多いですよね。

 光りものと聞いたので、失礼ながら刀とかそっち系だと思ってました。

杉内:一応、4つの鎖が…まぁ、これはメンバーを表している感じなんですけどね。まぁ、どういった深い意味があるというわけじゃないけれど、俺達に非常に合ったジャケだと思いますよ。ただ、このジャケを見てHMだと思う人はどれだけいるかは分からないけれど、その辺はどうでもいいかなぁって思ってるんですよね。実際に音を聴いてみて、ジャケットが意図するものを何となく分かってもらえればね。かなりのものだと思います。

 多少、モダンなイメージのメタル、VIGILANTE辺りと並んでもOKな感じもしますが、ジャケで重要な点といえばパッと見て分かりやすい点とイメージが伝わり易い点だと思うのですが、これは充分に伝わりすね。

杉内:彼はCAR AND DRIVERという雑誌の表紙も描いているイラストレイターで、結構、個展を開いたりもしているんだけど、インタヴューの紙面ではどういう風に書くのかは分からないけれど、金属の中の映りこみを描くのが非常に上手い方なんですよ。

 このジャケのイラストを見る限りでは、金属の影とか光沢を上手く描かれていますね。金属的なんだけど、何か生々しい面も持ち合わせてますよね。

杉内:彼とは元々知り合いなんだけど、プログレが物凄く好きで、よくプログレのテープを交換したりしてるんですよ。彼はフランスのARRAKEENなども好きで、僕がARRAKEENのデモ・テープとか持っているといえば、探しといてって言われるような仲なんですよ。凄くロック好きな方でね。元々、知り合いだったっていうのもあるんだけど、今回こういったプロの人間にサポートしてもらえるっていうのは、エンジニアを担当してくれたSOUND DALIの乾にしてもそうなんだけど、凄く有難い事なんだよね。

 こういった人達を味方につけらたれたのは強いですよ。

杉内:人と人との繋がりって凄く大事だよね。今、凄くそう思う。

 これは個人的な事になりますが、今こうしてKABBALAで書かせてもらっているのも一種の繋がりだと思うし、こうしてこの場にいるのも有難く思いますから。

杉内:最終的にはそういったところから繋がっていって、まぁ俺達、俺も含めてだけど、皆、好きな事をやっていけるような状況を作っていければ楽しいなって、ずっと思ってるんですけどね。

 理想と現実の壁はなかなか厳しいものがありますよね。

杉内:理想を求めなかったら、何もスタート出来ないからね。「理想じゃん」って言われても、理想は求めなかったらいけないとは思うけどね。

 アルバム・タイトルの「VIRTUAL IMAGE」なんですが、これをタイトルにした理由等を教えていただけますか。

杉内:「VIRTUAL IMAGE」っていうのはタイトル曲でもあるんだけど、今回のアルバムでも1曲目に収録されているやつでね。元々、マリリン・モンロー、ノーマ・ジーンの事を歌った曲で、これは俺達アーチスト、俳優等もみな思っていることだと思うんだけど、周りからのプレッシャーにどれだけ耐えられるかだと思うんですよね。あと、自分達の中に向上心があって、その殻をどうやって破っていくか、それに耐えられるか、耐えられないかの中でやっぱり生きていく事があって、“Virtual Image”、「虚像のイメージ」って事なんだけど、ノーマ・ジーンっていうのは最終的にはそれに潰れていった人間なんですよ。「バス停留所」辺りから凄くいい作品を残すようにはなったんだけど、最終的にはやっぱりお色気路線的なイメージが優先しちゃって、実力派女優とは言われなかった事で凄く悩んでいた。そういったところにどことなく親近感があって。まぁ、何となく歌詞にしたのが“Virtual Image”。「VIRTUAL IMAGE」、ノーマ・ジーンだから彼女をイメージしたジャケを作ればいいかっていうのじゃなくて、(アルバム全部の曲の)全てのイメージに対して、どういうイメージのジャケがいいかなって考えたわけで、その辺はイラストレーターの彼が色々考えたみたいですよ。

 ジャケ=音楽のイメージと見られる事もありますからね。

杉内:SACRIFICEの時は1stアルバムからイメージとか、どうしてこういうジャケットなのかと言われたら説明が出来るぐらいに全部決まっていたんですけどね。

 サクリ君があって…って感じで。

杉内:(ちょっと困ったように…)まぁ、サクリ君っていう名称は正しくないんだけどね(笑)。正式に名前は決まってないのが現実なんだけど…。シンボルマークの6本の角っていうのは、鎧を被って角を出す、あれは拷問をうけながらも角を出していく位の反逆心、勢いを現しているんだ。6っていうのは聖書にも出てくる獣の数字の一つだし、それを絡めていってイメージを創りだしたんだ。あとはメタルチックな鎖とかを絡めてシンボルにしたんだけれど、その辺を理解している人は少なかったですね。

 全く知らなかったです。

杉内:そこらへんはアンダーグラウンドの連中特有の「分かっているやつだけで構わない」ぐらいの方向性だったからね、あの頃は。でも、やっぱり、こないだ昔の雑誌とかパラパラと見ていたら、あのイラストっていうのは強力だったんだなぁ〜と思いましたよ。BURRN! とかでもダン・リルカ(当時NUCLEAR ASSAULT)がオフの時にあのデザインのTシャツを着てインタヴューを受けている写真とかを見たりすると何か凄く嬉しかったしね。今みたく外国のバンドとの接点がまだ少なかった頃の話だからね。それは本当に嬉しかった。SODOMしかり、NUCLEAR ASSAULTしかり。

 SOLITUDEがアルバムを出したら、海外のバンドのオープニングを務めるなんて事になるといいですよね。

杉内:是非、そういったブッキングを組めるように、その方向にバンドを持っていかなければいけないなと思います。それは売れる、売れないとかじゃなくて、俺達がそれによって凄く楽しめるからだと思うんですよ。例えば俺達がSAXONと一緒にやったとすれば、とてもグレートな事だし楽しめるとも思うし、何かチャレンジしたいですよね。やっぱりプレイする側で非常にアーティスティックなところもあるんだけれど、それとは別に1キッズとして、ファンでしかないところも凄いあるから。俺達、別にメンバーで特にそういう話はした事は無いんだけど、皆、ファンでいたいって事が最終だと思うんですよ。好きなアーティストと握手して喜ぶとか、好きなライヴを見てこうなりたいとか、それでいいんだと思いますよね。それ以上でも、それ以下でもなくて、それがベストですね。まず、バンドを始めた理由というのがそこだから。好きなバンドに憧れてやり始めたのが第一だよな(と、井田氏に話を振る…)。

井田:自分もああいう風になりたいなってところからだよね。自分が感動した分、自分も感動させられるんじゃないかなって、そこから大きな勘違いして(笑)、ここまできちゃったけど、やっぱ感動っていうのが人の心を大きく動かすと思うから、感動して今の自分があって、自分達がやっている音楽を聴いて感動してくれる人が1人でも多くいれば、それが一番嬉しい事だよね。音楽に限らず、どんなものでも感動するっていうのが僕にとってもとても素敵な事だと思うから。

 結果的には一発目以降のライヴは井田さんだったから、SOLITUDEのギターの印象はやっぱ井田さんの印象が強いですね。

井田:俺は(SOLITUDEの)最初のライヴは見てなかった。杉さんと西さんがまた一緒にやり始めたらしいよという噂は聞いてたけど、まさかね、こうして自分がSOLITUDEでやる事になるとはその時は全く思わなかったですね。

杉内:井田は非常にいいギタリストだと思うよ。こんな事をいうのもなんなんだけどね(笑)。

 アルバムでも結構貢献していますよね。

杉内:曲に表情をつけたよね。

 “Virtual Image”等でのソロの部分も印象的ですが、短いインストの曲“Requiem Of The Kingdom”あたりの昔のゲイリー・ムーアっぽい雰囲気がこれも堪りませんね。

杉内:あんちゃん(SABBATのGezol氏の事:筆者註)もあの曲好きなんだよね。こないだ電話で「あの曲入ってんの?」って聴いてくるから「入ってるよ」って言ったら、「聴きたいな、それは」って(笑)。井田のソロは全て特に誰っぽいってわけではないけれど、日本人独特のフレーズっていうのは出てくるし、それは俺達がずっと聴いてきた日本の音楽からの影響を受けたところのバックグラウンドでもあり、さっきも言ったようにゲイリー・ムーアとかその辺のバンドやアーティストの影響も少なからずあるだろうけど、彼はそれを非常に日本人だからこそ出来るフレーズに変えているのがミソだと思うんだよね。オリジナリティって何かって聞かれて、今の時代は無いに等しいのかもしれないけど、でも井田のギターっていうのは聴けば(井田だと)分かるギターだと俺は思ってるんですよ。間違いなく。今、ギターソロが弾けない連中が増えてるから、その中で井田のようなギタリストは貴重だと思いますね。

 例えば“Virtual Image”でのさり気なく短いギターソロなんですけど、結構、耳に残るものがありますよね。

杉内:今日もビクターでマスタリングをやってきたんですが、やってくれた瀧口さんっていうエンジニアの方が、「ギターのソロ、いいですよねぇ」って言ってましたよ。

井田:「昔、ギターキッズだった頃を思い出すよ」って言われましたね(笑)。

 昔はギターヒーローってありましたよね。

井田:自分がギターを始めたのも丁度その頃でしたからね。

杉内:やっぱ、バックグラウンドは大事にしなきゃいけないと思うよね。

 自分がヘヴィメタルを聴き始めた頃、ギターヒーローの存在ってデカかったですね。

杉内:今みたく情報が氾濫していないし、限られた情報の中で自分達の耳を確かめながら好きなアーティストを探していくのは楽しい事だったから。v  そういうのは大切な作業なんじゃないかと思いますよ。

杉内:バックグラウンドは、ルーツは大切にしていかなければいけないという事は今になって凄く分かった事ですよね。

 杉内さんにしても、西田さんにしても、見ていて何処となく分かりますね。根っこはメタル、枝葉に色々なものがあるように思いますが…。

杉内:西を最初に誘った時も、西は70年代HRとかすごくが好きだったんですよ。俺は勿論オンタイムで通っていますから、さっきも言ったようにスティーヴ・ハリスも好きだったりするところがあって、非常に共通点が多いんですよ。で、俺達が頑張らなければいけないなって思うのは、日本人の多くはヨーロッパやアメリカの人達と違って音楽をを聴いている人やプレイする人達のなかに非常にルーツを知らない人達が多すぎますよね。そんなに堅い事言わなくてもいいんじゃないかって思うかもしれないけど、それがヨーロッパやアメリカとのバンドの深みとしての差であったり、音楽業界のマーケットやレコード会社のHRやHM系のバンドに対する待遇の違いに現れてきてるんじゃないかと思いますよね。ルーツをパクろうが、パクらなかろうが、それを知ってさえいれば楽しむ事も、批判する事もできる。しかし、現状ではそれをやっても分からない人達が多すぎる。だから末端であるリスナー主導型ではなく、商業主義優先型の与えられる市場に出来上がってしまってる様な気がするんだ。こないだ、MARILYN MANSONを見に行ったんだけど、どの曲かは忘れたけどね、LED ZEPPELINの“Communication Breakdown”みたいなフレーズが入ってくる曲があったんですよ。それを分かってる人が、この会場の中に何人いるのだろうかと思いましたね。多分、これがアメリカとかのライヴ会場だったら逆に盛り上がるんじゃないかと思うんですよ。そういった奥行きの無さっていうのをすごく感じるんで、そういうのが、勉強するとか堅苦しい事ではなくて、楽しみながら入り込めていったら、日本のヘヴィメタルも層が厚くなるんじゃないかなって思いますね。ARCH ENEMYなんかも結構フレーズを流用してますけど、聴いている人はああいったフレーズも全部分かってんのかなって思うと、不思議になる時がありますよ。ARCH ENEMYやMichael Amottが凄いイイって人はまぁ、メジャー志向の人もいるんでしょうけど、そういったサウンドの元を知っている人がレコードを買ってるっていうのもあると思うんですよね。彼はプレイヤーであり、キッズじゃないですか、そういったところに共感を覚えるところはありますよ。

 ところで、改めてジャケを眺めてみると、どことなくデジタルな感じもしますね。

杉内:うーん、そうですか。俺達ね、さっき多田さんも言いましたけど、やってる音楽に関しては王道に分けられるパターンが圧倒的に多いんですよ。でも、最近のバンドの音も聴いてますし、最近、何が受け入れられてるのかっていうのもよく分かっているつもりなんで、その辺はあくまでもクールにやりたいですよね。ただサウンド自体、俺達にしかやれない事って出ちゃうから、それが例えば王道って言われてしまうのかもしれないけど、受け入れる事自体は全然OKなんで、そういった事にカテゴライズされたくないっていうか…。

 そういう意図も含めたジャケなんですかね。

杉内:ジャケットもそうだけど、来るものを拒まないって言ったらなんですけど、曲もどんどんチャレンジしていきたいと思ってますよ。■■■




 今回は始まりの時間が遅かった為、終電の都合で質問が全部出来ず、残念ながら肝心のアルバムの話が触り程度しか聞けなかった。次号#29ではアルバムの話を中心に再度色々と聞くつもりなので、楽しみにお待ちいただきたい。





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