SOLITUDE interview

EAGLE FLY FREE 〜兵達の新たなる野望〜
 さて、前号に引き続きSOLITUDEのインタヴューである。前回は時間の都合で中途半端に終わってしまったが、今回は前回途中までしか聞けなかったアルバム「VIRTUAL IMAGE」全編、ライブ・イヴェント「Heavy Link」にかける情熱等をじっくりと語っていただくつもりだ。9月頃にはリリース予定となる「VIRTUAL IMAGE」は、SOLITUDEの魅力が詰まった筋金入りのヘヴィメタルを聴かせてくれるアルバムである。本人達はヘヴィメタルの枠に留まる事のない意識で活動をしてはいるが、やはり、どんなに意欲的な事をやろうとも、彼等から感じさせるものは流行に流される事の無い強い信念を音楽から感じさせている事だけは確かだ。メタル、ロック、枠組みはどうあれ、極上なのには変わりはない。音源のリリースはもう少し先なので、取りあえずは言葉、文章でSOLITUDEというバンドを感じてほしい。


※ このインタビューは、KABBALA#29(2001年 8月発行)に掲載したものです。[原文ママ]




  日 時:2001年7月9日(月) 午後9時過ぎ

  場 所:東京・池袋西口の喫茶店サンマリン&ZAOにて

  話し手:話し手:杉内 哲(Vo)、井田 真悟(G)、西田 亨(Ba)

  聞き手:多田 S.S.M. 進 (KABBALA'zine)




 前回はアルバムの話を触り程度聞いた形でしたので、今回改めてアルバムの話から聞きたいのですが、“Virtual Image”のイントロですが、あれは結構インパクトありますよね。あのアイディアは誰が持ってきたのでしょうか。

西田:それは元々井田が加入する前の話なんだけど、前のメンバーでやっていた時に俺達はいつもスタジオでリハに入る前に、自分達の音を出して音作りをしたり、バランスをとったり、時にはジャムったりするんだよね。ジャムるって死語かな(笑)。その時、以前のギタリスト(前任者の中森の事)が今の“Virtual Image”の原型となるリフみたいなものを弾いたんだ。そしたら、杉さんが「何かそれ使えるんじゃない」みたいな事を言い出してね。それで、「そこ、もうちょっと、こんな感じにしたらどう?」ってところからディスカッションが始まって、「結構いいんじゃないかな」って事になってね。そして俺がベースラインをつけ、ドラム、ヴォーカルものせていったという感じかな。

杉内:入り方とかも工夫したりとかね。

 初ライヴの時にあのイントロで入ってきた時は「グァー!」ってきましたね。

西田:(あのイントロは)偶然の産物なんだけど、自分等の好きだったものだとか、聴いて育ってきたものが物凄く出たんじゃないかと思いますね。

 井田さんは加入してから、アルバムに収録されている曲の殆どが完成していたわけですが、その中で自分の色とかを加えられたとは思いますか。

井田:うーん、どこをどうしたかとかはあまり覚えてはいないけど、曲の構成とかはそんなに変わってないと思いますよ。

杉内:でも、ギターソロの入ってるところとかはフレーズ的にはかなり変わってはいるね。

西田:ギターソロは全て井田に任せたからね。それを聴いて皆でアレンジをしたから、新しいものにはなっているとは思うんだけど。井田らしさが出てていいんじゃないかな。

杉内:ただ、良くも悪くもクサいフレーズを弾き過ぎなので(笑)、その辺が行き過ぎた時には他のメンバーがストップをかけないと、もっといっちゃいますから。

 でも、今どき井田さんのようにギターを聴かせるプレイヤーって少ないですよね。

西田:僕も杉さんもそういうプレイヤーが好きだからね。

井田:最初に曲をもらった時に、ギターソロが全く入っていないテープをもらったんですよ。で、どこからどこまでがギターソロか分からなくて、それで俺がそれを聴いて「あ、ここからここまでがソロだろうな」って勝手に入れてアレンジを加えたんですよ。多分、前の人が弾いていなかったところを弾いていたり、その反対に弾いていたところを弾いていなかったりしているところがあると思います。まぁ、最初に聴いた時の印象で全部アレンジしましたね。あと、自分が「これだ」って思ったところは西さんと相談しながらコード進行を変えたりとかね。

 失礼ながら、井田さんのプレイって、SOLITUDE を聴くまで全く知らなかったんですよね。BARTOLOMMEO自体を聴いた事が無かったですし、音源も出していなかったバンドだった事もあってか、噂で話を聞いた事しかなかったんですよ。BARTOLOMMEOは結構テクニカルなバンドだったと話を聞いていたので、かなりテクニカルなプレイをするのかと思っていましたが。

井田:あのバンド(BARTOLOMMEO)はそういうバンドだったと思うんですよ。だけど自分はそういった中においてメロディックなプレイをする事によって、自分の価値を出していたつもりだったんですね。そうしたら単なる「テクニカルなバンド」で終らないで、メロディックで感情的な部分も伝わるんじゃないかと思って。だから、スタイル的に大きく変わったということは無いですよ。それが、より洗練されてきたというのもあるし、自分自身もそれなりに年月は経っているわけだから、成長してきているつもりだし、周りのメンバーによって引き出してもらった部分もあると思いますけどね。あと、曲作りには参加していなかったけど、あたかも自分の曲のように弾いているので(笑)、充分、自分の力は発揮出来てるんじゃないかと思います。

 “You Wish”に関してはSACRIFICEの色を濃く感じさせる曲ですが、あの曲は古いものなんでしょうか。

西田:あれは古い曲だね。ウチの場合、誰かが作ってきたアイディアを、みんなでアレンジしながら曲にしていくんだけど、あの曲は前のギタリストの(中森)浩樹がイントロから始まって、サビが終ってギターソロって流れを今のリフどうりではなかったかもしれないけども作ってきてね。それにスタジオで、アレンジにアレンジを加えながら、更に井田が加わり、よりパワーアップしたのが、今の形という事だね。

杉内:“You Wish”に関してはヴォーカルラインを2 パターンやっているんですよ。前半と後半で。一番の中での前半の部分、後半の部分でリフが一緒なんですけど歌を変えるとか、まぁインスピレーションが一番大事なんですけど、そういった部分を皆で考えながら、同じようなリフなんだけど違うように聴かせる、っていうか、とにかくそういった事を考えながら作った曲ですね。

 これを言うのは変かもしれませんが、“You Wish”に関しては「TOTALSTEEL」(SACRIFICEの2ndアルバム)に収録されていてもおかしくない曲ですね。

杉内:まぁ、何の曲に関しても、そういったところのフレーズは幾つも出てきますよ。やっぱりアレンジをする人間は一緒ですから。v  変わった部分もあれば、変わらない部分もありますよ。“Two Faced In My Soul”でのALICE IN CHAINSみたいな出だしは、新しい面が出ているといった感じなのでしょうか。

杉内:そうですね。(音楽的には)新しくはないかもしれませんが、自分達にとってはチャレンジした事が、新しい事であって。あれもアルペジオを作ってみて、まぁ、どうやって作ったのかは忘れましたが、ヴォーカルラインを中心に作っていったような気がします。特に前半は。

 結構、歌メロがキャッチーな曲ですよね。

杉内:そうですね。かなり、いい曲だと思いますよ。

 あの曲は最初にSOLITUDEを見た時にバイオに書いてあったようなメタルの枠に留まらない新しい面を感じさせてくれましたね。

杉内:でも、最終的にあの曲をやってもヘヴィメタルの王道だって言われちゃってる僕等の立場は一体何なのかなって思いますけどね(笑)。

西田:すごく冒険したっていうか、新しい事へのチャレンジのアイディアを今までにも一杯出してきて、あの曲に関しても冒険って言っちゃあ変だけど、僕にしても、杉さんにしても、今まで(自分達の音楽の中には)なかった新しいもの、進化したものを出したかったっていうのがあって作った訳なんですよ。だけど結局、最終的にはヘヴィメタルの一言で皆に片付けられちゃってる感じがして複雑ですよね(笑)。

杉内:嬉しい事ではあるんですが、これから先もそうなのかなっていう気持ちの不安はありますね。半分、冗談ですけど(笑)。

 自分達の中にあるルーツが巡り巡った結果が今のSOLITUDEの音楽じゃないかと思うんですよね。

西田:(自分達の)根本にそういうのがあると思うから、そうなっちゃうのはしょうがないのかもしれない。

井田:音楽の幅が広がった部分があって、それで元々あった自分らしさがあるわけだから、そういうところでチャレンジしていくのはいい事だと思うんですよ。自分自身が変わっちゃったら、全く違うものになっちゃうんだけど、でも、その拘りみたいなものは持ち続けながら変わっていくって感じで。

杉内:やっぱり今の色々な音楽を聴いていて思うんだけど、NWOBHM以降、スラッシュ・メタル以降はアッとくるようなサウンドに出くわした事があまり無いんですよ。NIRVANAやALICE IN CHAINSやPANTERAはやはり凄いバンドだとは思いますが、皆が皆あてはまる訳ではないですけど、他のバンドのCD を聴いても確かにかっこよくって、演奏は上手いんだけれど、あとに残るものが無いっていうか。すべてじゃないですけどね。ロックバンドって本来何かしら訴えかけるものがあってロックバンドじゃないですか。ただ上手くてロックバンドだったり、カッコよくってロックバンドだったりっていう感じのアンバランス的なバンドが増えちゃってる気がするんで、内面から感じさせてくれるバンドがもっと増えたらいいなぁと思います。そういった点ではNIRVANAやALICE IN CHAINSなんかはそれを代表するようなロック以外の何者でも無かった様なバンドだと思うんです。例えば、かつてのロックやPUNK、NWOBHMのバンドにしても、自分達で表現したいからロックをやっているのであって、それがただ単に、まぁ最近の色々なバンドを聴いていても思うけども、これはうるさくて、確かにヘヴィメタルだけど、ロックしてるのかなぁって思うようなバンドが非常に多くなった気がするんですよ。多分、ライヴをやった時もそういうのって出るじゃないですか。それは俺達も気をつけなければいけない事だと思いますけどね。

 SOLITUDE って1曲1曲が長いですよね。まぁ、大作主義っていうわけではないんでしょうけど、長い曲を最後までまともに聴かせるバンドも減りましたよね。

西田:自分達としては長いだけじゃなくて、変な言い方だけど短い曲もやりたいなとは思ってるんだ。例えば40分、50分のステージでどうしても1曲が7 〜8分になっちゃうから、限られた曲しか出来なくなっちゃうんですよ。そういうところはどうにかして、大事なお金を払って見てくれる人達に俺達の全部を見せてあげれればいいなぁっていつも思いますね。今までは限られたものしか出せなかったという反省点もあるから、それが今後の自分達の課題かなとは思ってるんです。

杉内:短い曲で、暴走ドライヴィング型のMOTORHEADみたいな曲だったら、こんな事いうとなんなんですが幾らでもアイディアはあるんですよ。ただ、僕等はそういうのでは満足出来なくなってるんです。過去にやはりそういった音楽をやってますからね(同じ事の繰り返しはしたくない)。逆に短く曲をまとめるのって難しいのかなって思う事も多々ありますね。

 昔のASIAみたいに3 分間のドラマとして成り立たせるのも結構すごい事だと思うんですよね。

井田:意識して長くしようとか、短くしようっていう事ではなくて、結果的にあの長さになったという感じなんですけど。

西田:閃きだもんね。天から降ってくるもんだから(笑)。

井田:これからは結果的に短くなるように自分達は努力していこうと思うんです(笑)。最終的に聴いていて長さを感じさせなければ、それはそれでいいとは思いますね。

 インストの“Requiem Of The Kingdom”と“Beyond The Storm”ですが、あれは井田さんが考えた曲ですか。

井田:あの曲はセットになってるんですよ。要は“Beyond The Storm”のイントロとして“Requiem Of The Kingdom”があるんですよ。

 本編の“Beyond The Storm”のほうが短くないですか。

井田:そんな事無いですよ。あのアルペジオのやつが“Requiem Of The Kingdom ”。(ここで筆者が大きな勘違いをしていた事に気付く…) 前のインタヴューの時もおかしいなぁとは思ってたんだけど(笑)、じゃあ、今回訂正を入れておいて下さい(笑)。だから一応セットになっている感じで、“Beyond The Storm ”が本編で、“Requiem Of The Kingdom”はそのイントロだと思って下さい。

 あの曲には何かコンセプトとかあるんですか。

井田:あれは5 年ぐらい前に作った曲で、ある日、アルバムを録音するとなった時に、練習の時に杉さんが「何かインストとかあると面白いアルバムになるね」とか言ってて、「昔、作った曲でこんなのがあるんだよ」って事で、皆に(この曲の)テープを聴かせたら、「やろうじゃないか」って話になって、収録する事になったんですよ。あれは砂漠の中で昔の中近東の王様が軍勢を引き連れ、嵐の中を行進していくといったような、そんなイメージの曲なんですよ。あの曲を作った時はバンドでやろうとかは全く思ってなくて、ただMTR で宅録を色々とやっていた時に作ったものなんで、まさかね、こういう形でアルバムに収録されて世の中に出るとは思ってもみなかったです。長い間、家で眠っていた曲ですが、これからは皆に聴いてもらいたい曲ですね。最後の方とかは結構JUDAS PRIESTの「DEFENDERS OF THE FAITH」の頃のツインリード、例えば“Freewheel Burning”(と言ってギターソロのメロディを口ずさむ)あたりを意識してるっていうか。JUDASのツインリードって、規則的に3度とか5度とかでハモっていくんじゃなくて、たまに重なったり離れたりして…。それと比べれば、“Virtual Image”のハモりなんかはMAIDEN風と言えるのかもしれませんけどね。

 少し前の話とかぶるところもありますが、最後の曲“Eagle Fly”はSAXONをイメージした曲だと聞きましたが。

杉内:歌詞的にはそうですね。

 曲を聴く限りではやはりSAXONのイメージには繋がらないですね。SAXONといえば、やはり“Motorcycle Man”等のようなバイカーズロックのイメージですからね。

杉内:あの曲は歌詞の全てがSAXONに捧げているようなものなんですよ。元々、鷲をテーマにしたような曲を作りたくて、それで前にも言ったかもしれないけど、鷲って、いま世界各地で生存する場所を追われてるみたいなんですよ。。ですけど、鷲はニューヨークの様な大都会の中でも巣をつくり住めるような生命力があるんです。その都会の中でも行き抜く力とか、自分のスタイルとか、その鷲であることの本能を捨てずに環境が変わって行ってもその中で生き抜く力っていう事に凄く思うところがあって。で、僕の好きなSAXONっていうバンドは以前、アメリカ進出を狙って失敗したじゃないですか。だけど、またシーンに戻って来てイギリスからドイツに本拠地は動かしてはいるけども第一線でやってるというところが、彼等のイメージとダブルところなんですね。やっぱり僕の中ではSAXONは全く変わっていないイメージがありますし。それに鷲のイメージを重ねるようにして、捧げるような感じの歌詞にしたんです。それは結局、自分達もそういう風に生きたい、生きる事が出来ればなぁって思いが強いからなんですけどね。

 SAXONのアメリカ進出を狙ってた辺りのアルバムとかありますよね。その辺も改めて聴くと良いアルバムだったりするんですよね。

杉内:不思議なもので、僕も当時聴けなかったようなバンドのアルバム、例えば当時「こんなのヤワくて聴けないよ」って思っていたやつが、今になって聴くと、今のその辺の新しいバンドよりもよっぽど聴けるようなアルバムを作っていたりするんですよ。逆を言えば、それなりのものは作ってはいたのに、その時の僕が若かったせいかもしれませんが、バンドに対して「こうであるべきだ」っていう固定概念を求めすぎてたんじゃないかと思うんです。つまり、アーティスト側が少しでも離れた事をやっちゃうとついていけなかっただけで、実はアーティスト側は凄くいいものを作っていたのではないかって思う事が良くありましてね。

 さて、この辺で話題を変えたいと思います。「Heavy Link」について聞きたいのですが、何故、「Heavy Link」を行おうと思ったのでしょうか。

杉内:「Heavy Link」という企画は、以前から言っている事なんですけど、自分達がやれる方法でのシーンに貢献出来る事っていうのは何か?という事を考えた上での企画なんですよ。以前から俺達は現状の日本のへヴィメタルシーンの中では、ちょっと何かやりづらいよなぁ〜ってずっと感じてたわけで、それを自分達が企画を始める事によって、もっとやりやすくなるんじゃないか、シーンにも僅かではあるけども貢献出来るのではないかと思ったわけです。そうすれば、それによって底辺が拡大出来るし、何かが変わるんじゃないかという気持ちが凄くあってね。それがきっかけですね。
 「Heavy Link」の主旨っていうのは、かなりしっかりしてると思いますよ。へヴィな音を出しているバンド、いわゆる今回の出演バンドの様に普段自分達が望んでいる事ではないけれども一般的にカテゴライズされてしまっていている事により、あまり接点がもてなくなってしまったバンド同志が一同に集まり、ライブをする事により切磋琢磨させるというか、それはバンド側だけではなく、お客さん同志も刺激し合うというか、その事によりお客さんであるファンもバンド側も今まであった活動拠点の殻を破るというか、そんな風に出来たらもっとヘヴィシーン自体もパワーを持てて、シーンの横の繋がりのパイプも強くなるんじゃないかと思うんです。
 それと、これからのリスナーである中・高校生から25 、6 歳ぐらいのリスナーの人達にとってはヘヴィメタルっていうのがよく分からない存在になってると思うんですよ。例えばPANTERAが聴ける、SEPURTURAが聴ける、SOULFLYが聴ける、KORNも聴ける、SLIPKNOTも、だけどそれがヘヴィメタルの例えばJUDAS PRIESTに繋がっていくのかっていえば、繋がっていかないと思うんですよね。そこらへんをもっと理解出来たり、ルーツを分っていった方が音楽を聴いた時、もっと楽しんじゃないかと。やっていく側も楽しいし、聴く側もね。それがいわゆるヘヴィ系のシーンの拡大、奥の深さに最終的には繋がっていくのではと思っているんです。ルーツは知らなくてもいい事だとは思いません。ただ、新しいルーツが出来てきているのも否定出来ませんがね。そして、この様な主旨を理解して頂いているなバンドにだけ参加してもらってるという形を現状はとっています。今後もいろいろなバンドが参加してくれると嬉しいですね。

 メタルと言われるバンドを色々と集めていますよね。

杉内:いつも決まったようなメンバーと決まったようなライヴをやっていても、決まったようなお客さんしか来ないんではないかと思うんですよね。僕達は古くから音楽活動をやっているメンバーですけど、あの頃(80年代後半〜90 年代前半)僕達の頃じゃなくても、それ以前も海外のバンドが来日したら、そうじゃない系統のバンドが一緒に出たりして、「あ、こういうバンドがいるんだな」っていうのが分かって、それを切っ掛けに聴くっていうのがあったしね。あと、音楽雑誌一つ取っても、カテゴリーで分けられている雑誌じゃなくて、一つの情報源として総合的な音楽雑誌があり、色々なジャンルの音楽が載っているけど、その中から情報をチョイスしていく感じだったんですよ。それが、今は何か欲しい情報を得るには、その情報だけを得ればいいって感じになってますから、それ以外のことは全く分からないと思うんですよね。だから、そうじゃない状況にしていかないと、今の状況は変わらないんじゃないかなっていう危機感があって。じゃあ、そういった事(「Heavy Link」のライブ・イヴェント)をやっていかないと状況は変わらないのかなっていう事で始めたのも一つですね。

 更には若いバンドとかとやるっていうのも刺激になりますよね。

杉内:「Heavy Link」で最初やった時、EDGE OF SPIRITあたりは凄く刺激になったね。

井田:その前に一回、EDGE OF SPIRITと対バンした時があるんだけど(99 年12月18日、難波BEARSにて:筆者註)、その時は出番がEDGE OF SPIRITの次だったんであまり観れなかった。でも、この間の「Heavy Link」の時は出番が少し空いていたので結構観れたんだけど、客席から見て「こいつらって、こんなにかっこいいバンドだったんだ」って前から感じてた以上に思いましたね。本当に面白かったです。

杉内:刺激になったよね。

 今回、YOUTHQUAKEを決めたのは英断だと思うんですよ。

杉内:YOUTHQUAKEのメンバーの皆は大変喜んでくれてるみたいですよ。彼らは今回のニューアルバム(6月にリリースされた「APOCALY-PSE」)を聴いてもそうなんですが、今回からツインギターになって、かなりスラッシュやメロディック・デスにも近い形のサウンドになってるんですよ。今まではエクスタシー系って言われて少し派手目なイメージがありマニアックなへヴィメタル・ファンからは敬遠されがちなイメージがついてまわっている様なバンドだと思われてる感がありましたが、そんなの関係ないんじゃないかと思いまして。イイ音を出すんであれば一緒にやるべきだと最終的に判断しました。やはり、その様な良いバンドを皆観るべきだと思うし、それを受け入れられなかったら(メタルのシーンは)この先、無いんじゃないかと。僕達も良いものは良いって言えるようにしておかないとね。そういったバンドとはこれからも一緒にやっていきたいですよ。

 本当にこういう機会にYOUTHQUAKEが観れるのは嬉しいですね。

杉内:だから、今回、YOUTHQUAKEを観た事がない人達はかなり多いと思うんですね。今のクラブに来ているお客さん達は、何気に髪の毛を金髪にしてるとか(風貌がヴィジュアル寄りだとライブを観なかったりとか)それは好き嫌いの問題ですからしょうがないですけども、やっぱり一度は観てもらって判断してもらわないとね。そういったバンドの出番も考えて企画の中に入れていってます。それで、バンドによって音の差とか、ステージングの差って出てくると思うんですよ。でも、そういった事をバンド側も聴く側も体験しながら、もっと刺激し合う、こうあるべきだとか、もっとやらなきゃいけない事があるとか、こんなバンドもいるんだといった事が、お互いに吸収し合え理解し合えれば、もっとバンド側も強力になるし、ファン自体ももっと楽しめるんじゃないかと思うんです。そう思うと、自分達SOLITUDEも、もっと頑張らなけりゃいけないですよね。

 この意図している事が本当に観客に伝われば成功ですよね。

杉内:でも、去年から始まった事ですけど、いざ蓋を開けてみないと不安ばかりで体には毒ですよ(笑)。あくまでも企画を楽しんでもらえるる様にしておかなければいけないわけだから、最初のバンドから見逃せないといったような状態に出来る限りしておかなければならないわけで。その為にも低料金でやっていますしね。これは勿論、皆の協力があって出来る事なんですけども、誰かしらがそういった事を切り盛りしてやっていかないといけないと思います。

 あのメンツですから割り振りも大変だったんじゃないですか。

杉内:ムチャクチャ大変でしたね。あの割り振りは正味2日悩みましたね。2日悩んだっていっても、まるまるではなく、正味48 時間は悩んだような感じでしたね。

(サンマリンが閉店の時間になったので場所を移動する事になる)

杉内:まぁ、これは気のせいかもしれませんが、「Heavy Link」をやった後から、他のバンドとかも(ジャンルの枠を超えて)色々なバンドとやる機会が増えてきたと思うんですよ。観客の中でもそういった意図を何となく感じとってくれる人がいるのかなと思えるようになってきたんで、もしかしたら、それは自惚れかもしれないけども、役に立ったのかなって気はしてますね。

 バンド側でも客側にもプラスになるものが大切だと思うので、そういった意味では効果が表れていると思うんですよね。ただ、心臓には悪いでしょうけどね。

杉内:そうだね(笑)。大変ですよ。

 SOLITUDE がどっちの日に出るかでも悩んだんじゃないですか(割り振りに関してはp4 〜5 を参照)。

杉内:そうですね、僕達としては、正直、どっちかといえば2 日目に出たかった方なんですがバランスもあったし、ツアーバンドも結構多いですから、今まで対バンした事のないバンド同志との組み合わせ等も考えた結果がこうなりましたね。今回は1日目がHeavy Link然としてて、2日目がヘヴィ・メタル・デイだと思うんですよ。

 さて、アルバムの話に戻しますが、アレンジ面等で気をつけたところってありますか。

西田:アレンジっていうか、ギターソロは今まであった曲にしても新しい曲も、基本的には井田にまかせっきりなんだけど、井田は時々とんでもなくクサいフレーズを出してくるのよ。で、杉さんは「ちょっと待ってて、一回全体を見直してから」って感じなんだけど、俺なんかは「いっちゃえ!」みたいなところもあってね(笑)。そういう感じでメンバーの間でもバランスは上手く取れているとは思うんです。

井田:曲が出来上がってから、録音するまでの間にかなり時間もあったし、“Virtual Image”と“Eagle Fly”は一度レコーディング(SOLITUDEは99年末にプロモーション用として2曲を録音して、関係者向けにテープを配付していた:編者註)しているからこそ、それ以上の物にしようとして苦労したっていうのはあるんですけども、曲の構成やアレンジ等を改めて考え、直していくのに時間を割いたのは“You Wish”と“Two Faced In My Soul”です。ギターソロも一回録音し直したし、乾(アルバムをレコーディングした際のエンジニア:筆者註)とかの協力もあって、特に“Two Faced In My Soul”は録音し直してよかったなって思う。もう前のギターソロと全然違うフレーズなんですよ。明け方眠い中で偶然閃いたフレーズとかも入っているんで。それだけ、長い時間かけてジックリ出来たから良かったですよ。今となってはいろいろと反省すべき点はいっぱい出て来ましたが、自信を持って出せるものにはなったと思うんですよ。

 本当に時間かかりましたよね。難産の末って感じですね。

杉内:そうですね。ちょっと時間をかけすぎたかもしれませんね。ただ、そういった環境にあったんで、それはそれでよしとしないと。そういった意味では恵まれてますよね。例えば、3日で仕上げろっていう話じゃなかったから。例えば3日で仕上げろって言われていい緊張感を持ってやるバンドもいるだろうし、それはそれで全く構わないと思いますが、自分達がそうじゃなかったという事に関しては、もっと見つめ直す時間もあったんで、非常に恵まれているとは思います。

 バンドとしての考え方や意識について、SACRIFICEの頃と比べて、変わった面とかってありますか。

杉内:変わっていますよ。変わっていて当り前ですよね。気の利いた事は言えないですけど自分の中ではまだ生ぬるいかなって思う事はあるんですが、かといって、バンドはこうでなければいけないっていう既成概念はだいぶ無くなってきてはいますから、その点はいい感じでラフになりましたね。やれる事を精一杯、今やれる方法でやるしかないんで。しかし、基本である皆が喜んでいる顔が見たいとか、皆が音を聴いて喜んでくれればいいなとか、そういった事っていうのは全く変わってはいないですね。ライヴ一つにしても、それに応えられる事は出来る限りやらなくてはいけないと思いますし。

 アルバムは残念ながら「Heavy Link」の当日には間に合わなさそうだという話を聞きましたが、それをリリースするレーベルは決まったのでしょうか。それとも自主制作でリリースしようかと考えているのでしょうか。

杉内:、一応、ちゃんとしたレーベル活動を出来るところから出そうかと考えています。今、色々な事が変化の時代ですので、例えばCDのリリース一つとっても、JASRACの登録の問題、インターネットの配信の問題、販売等に関して、どんどん変わってきているわけですよ。ミュージック・ビジネス自体がかなり変化していかなけばいけない時代になってて、最終的にミュージシャンは自分が活動しやすい状況を自分で守っていかなければならないと一層感じていると思います。なので、そういった中で活動をしやすい事をどうすればいいのかという事は、スゴク難しい問題だと思うんですよ。僕達の中では、今度リリースするCDが記念すべき取りあえず(SOLITUDEでは)最初のアルバムなので、最初から大きいところを考えて色々な事ところを考えた上であたれる所はあたってはみたんですが、今の僕達の活動スタンスではなかなか既存の国内のレーベルでは国内の方では現状は難しいかなと。まぁ、こういう状況ですからね(正式なドラマーも決まっていない状態という意味:筆者註)。海外ですともっと時間をかけてみなければ分らないところが沢山あって、まだまだかかりそうですから、国内のリリースを先にして海外の方をもっとゆっくり探して行こうと思っています。小さいところならリリースは「構わないよ」というような話をもらったところもいくつかはあるんですけど、まだまだ可能性が残っているので慌てなくてもいいかなと思っています。それよりも、これ以上、日本での作品のリリースを先送り出来ないというところが本音ですね。大きいところの話は殆どまとまらないという形になって。最終的に、日本のバンドでも海外のバンドでもマネージメントをしっかりとしてなければならないって問題が出てくると思うんですよ。マネージメントをしっかりとさせなければいけない、そういう時代ですよね。レコード会社を探すよりもマネージメントだなとは思ってましたんで。マネージメントがいるか、いないかで、どのレーベルから出してようが、海外でブッキングがとれるとかどうかも決まってきますからね。だから、その辺ですよね。海外のレーベルで出せたとしても、問題はマネージメント、またはその後のディストリヴュートをどうするかですよね。それをしっかりとしてやる事ができれば、流通もさせられると思うし。であれば、それはレーベルだけの問題ではないですよね。今、すごくアンダーグラウンドなバンドのCDとかも入ってくる時代ですから。例えば、メジャーで出したとしても、流通がちゃんとしていたとして、あとはバンドがどうするか、どういった行動をとるかによって色々と変わってくると思うんですよ。例えば、あるバンドが大きなレーベルと契約したとして、流通を全部レーベルに任せても、そんなに売れない事だってあると思うんですよ。バンドのやってる事がどうこうじゃなくて、マネージメントの問題だとかね。レコード会社も新しいものがどんどん出てくるわけだから、作品を出してから後々まで宣伝するわけにはいかないじゃないですか。じゃなくて、それも分っていて付き合いをしていかなければならないというところに難しいところがあると思います。出して何ヶ月間だけ宣伝するぐらいですから、それからの間に全てをやってもらえると思っている様なアーティストがいるとしたら側はそれは違う、甘いって思いますよね。あとは殆ど自分達でやってかなきゃならない。だから、マネージメントがそれをやっていかなければならない。例えば、今の流れで新しいものがどんどんチョイスされて、新しいアルバムが出たら、その時に、バーンと売り出して、その後、また次のアーティストに注ぐっていうレコード会社の宿命もあるとは思うのですが、これからは体制よりは、ある程度力を入れてマネージメントもしてくれる様なレーベルが必要なんじゃないかと思いますね。特にヘヴィメタルの場合は。でも、ビジネスルートにのっているというのが、またややこしくしているところではありますけど。

 流通面さえしっかり出来れば、あまりレーベルの規模とかに拘る必要はない気もしますね。

杉内:そうですね。本当は僕達もかなり(頭が)固いほうのバンドなんで、JASRACの問題とかにしても色々「当然だろう」と思う事もあるんですがよね。JASRACのほうも、調べれば調べる程、わからなくなる難しい状態事もありまして。本当に意味があるのかっていうぐらいで…。ただ、今、こういった時代だからこそ出来る事っていうのは、いっぱいあるはずですと思いますから、一つ一つクリアして行きたいと思っていますね。

 井田さんにとっては初めての公式な音源とあるわけですが、結構、緊張はしませんか。

井田:いや、特に緊張とかっていうのはないけれど、(僕のプレイが聴く側に)どのように捉えられるんだろうなって。だから、はっきりいって、杉さんや西さんはSACRIFICEである程度「こんなプレイヤーですよ」って世の中に出たけど、僕は何の評価も無いに等しく、何年もやってはいるけど、(初音源という事で)新人として扱われるわけじゃないですか。

杉内:僕達も新人と変わらないわけじゃないですか。自分の好きな事を好きなようにやって、それがいったいどういう評価をされるのか。

井田:それが楽しみといえば楽しみですね。

 そろそろ最後になりますが、月並みな質問ですけど、読者にメッセージがあればお願いします。

杉内:良いものには古いも新しいも無いと思いますから、僕達は信じた道を進んでいくしかありませんので、それをやっぱり応援してくれる人達がいて、僕達が成り立っている事もあるので、これからも皆には応援してもらいたいですね。皆もやっぱり世の中の流れとかではなくて、自分の信じるようなバンドを応援したりとか、好きなサウンドをずっと好きでいたりしてくれれば、もっと、この先、ヘヴィ系のサウンドは定着していって楽しくなるんじゃないかなとは思いますんで。皆で楽しみながら頑張ってもっと、面白い世の中にしたいですね。

井田:いつもインタヴューとかで言ってるけど、別に究極のへヴィメタルバンドを目指そうとか特に思ってるわけじゃない。けど、結局はそういう感じで見られてるし、自然にやっている事がそういう風になってしまっているわけなんですけど、本当に好きな事を好きなようにやって、それが、結果的に聴いている人を感動させられれば凄く嬉しい事なのんで、まずはアルバムを一度は聴いてもらうのが一番早いですね。初めての音源で、あまりライヴも頻繁にはやっていないので、僕等の事を知らない人も多いとはは思うけど、気軽にライヴとかには来れないかも知れないけど、興味があれば気軽に聴いてもらって、それで「良い」と思ったらライヴにも来てもらいたいですね。無理に聴けって言われたって自分でもそれは無理だから。良いと思わなければ、それは仕方がないです。でも、本当に自分としては良いものが出来たと思いますので、それで感動してもらえれば、僕達は本当に嬉しいですね。

西田:アルバムの話とかとは別なんだけど、俺はずっと前から、そして今も自然体でやってきたから、本当のに自然体、あるがままって感じで、たまには無理する事も必要だとは思うけど、無駄も必要だと思うって感じのやり方を通して来たからだから、だから皆も自分のやり方とかを持って楽しんでやってくれればいいんじゃないかと思うね。

井田:僕等の場合、「何とかメタル」とかじゃないけど、こういうのが好き、ああいうのが好きっていう…例えば、様式美っぽかったり、スラッシュっぽかったり。そういった要素を微妙に感じるところがあるとは思うんだけど、だからと言ってどれかに偏っているわけでもないし、そういったヘヴィメタル全般を好む人で、少しでも興味があって聴いてもらえれば、きっと喜んでもらえるものだと思うんですよ。だから、あまり拘らないでチャレンジして聴いてほしいですね。

杉内:(SOLITUDEの音楽が)ヘヴィメタルなのかどうかというのは別にして、自分達はロックをやっているつもりなんですよ。それが、たまたまヘヴィメタルと呼ばれているだけで。まぁ、ヘヴィメタルが好きなのも確かだけどね。でも、あくまでもロック、自分達を表現する為にバンドをやっていますから。それを、さっき井田が言ったように、それを受け入れるかどうかはその人の自由だと思いますけど、俺等はそういったスタンスの中でやっていくだけであって。ただ、多くの人に分かってもらいたいというのは表現者として当り前の事だから、そうなればいいかなと。勿論、背伸びなどはするつもりはもないです。ただ、アンダーグラウンドなバンドっていうのはアンダーグラウンドの強みがあるし、僕達みたいなバンドっていうのは必ずしもメジャーじゃないけれども、シーンの底辺の中で存在してなければならないバンドだとは思いますから、そういった中ではこういったバンドが一ついて、他にもこういったバンドがいっぱい出てきて、それで、初めてピラミッドの底辺が作れるような事になると思うんですよ。そして(シーン全体として)一つの形ロックになればいいかなとは思っていますから、今後もその中の一つのパーツで在り続けれる様、頑張るつもりです。■■■



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